PPM のピーター・ヤーロウの隠れた名盤はカリブ・テイストが満載
今回取り上げるのはロック名盤というブログのテーマからやや外れますが、個人的に懐かしい名盤、ピーター・ヤーロウ(Peter Yarrow) のソロ・アルバムです。
今時の若い方でPPMを聞かれる方は少ないかもしれませんが、「パフ」、「風に吹かれて」、「花はどこに行った」など多数のヒットで知られるフォーク・トリオのPeter Paul & Mary (PPM)は日本でも60年代に絶大な人気を誇りました。
私よりも少し上の年代が主なファン層でした。
1973年リリースのピーター・ヤーロウのソロ盤も学生時代の知人、というか先輩に聞かせてもらったアルバムでした。
プリミティブなイラストのジャケットが時代を感じさせます。
アマゾンで中古LPを見つけて懐かしく思い購入したのは割と最近で、わざわざこのLP目的で当時持っていなかったターンテーブルを購入しました。
今だにCDも出ていないようなので「隠れた」と言って間違いない筈ですが、最近までなかったウェブの音源が出てきていてYoutubeにも2曲アップされていたのには驚きました。
PPMはフォーク・トリオですがこのアルバムはフォークというより、ポップス+レゲエの曲が中心になっていて、録音もNY、ロンドン、ジャマイカのスタジオで行われています。
今あらためて聴いて見ると、ピーターの、というよりバックを務めるスタジオ・ミュージシャン達のクオリティの高さが印象的です。
一曲目の表題作「That's Enough for Me」はポール・ウィリアムズの曲。
これほど美しいラヴ・ソングはそう多くはないでしょう。
ウィリアムズはギターで弾き語っていますが、こちらはアコギ、ベース、ピアノで始まり途中からストリングスが入ります。
「もし君が幸せのあまり泣いてくれたら、もし抱きしめるだけで君の瞳を喜びで満たすことができたら、それだけで僕は十分なんだよ。それだけで僕は十分ヒーローなんだ」という歌詞を、ヤーロウは顔に似合わない美声で歌っています。
いつ聴いてもいい歌ですが、惜しむらくはストリングスがいかにも70年代、という時代を感じさせます。
That's Enough For Me - Peter Yarrow
「Isn’t That So」はジェシー・ウィンチェスター作で、カントリー・ブルース風の曲です。
ベース、パーカッション、ギターで途中からマウス・ハープが入っている。
ベースの動きがしゃれています。
Isn't That so
3曲目の「The Morning After」はLPの盤面には「Love's Way」という名前で載っています。
ピアノのイントロで始まる綺麗なラヴ・ソングです。
この曲は確かコピーした記憶がありますが、途中のベースの高音部がすごくかっこいい。
4曲目はポール・サイモン作でポール・サイモン自身がプロデュースで参加した「グラウンド・ホッグ」が入っています。
のったりとしたメロディのほのぼの感のある曲ですが、歌詞は人生の悲哀を感じさせます。
マウス・ハープがいい味出していますが、マンドリンの音が微かすぎてもうちょっと全面に出て欲しかった。
楽器のクレジットにムーグが入っているのですが、どこでムーグが使われていたのか最後まで不明です。
グラウンド・ホッグ(ジリスまたは北米産マーモット)
Side 2の「Harder they Come」はジミー・クリフによるレゲエの名曲。
リズムの歯切れの良さとストリングのコンビネーションが面白い。
Side 1の最後の「Wayfaring Stranger」もそうなのですが、ヤーロウ本人よりバックに入っているジャマイカのシンガーのこなれ感が凄い。
Side2の3曲目「Just One Pass」はヤーロウ自身の作ですが、カリブ風のノリのある楽しい曲。
ここでもバックのコーラスがメイン・ヴォーカルを食っています。
というかヤーロウの声がレゲエを歌うにはストレートな美声なので、名脇役のジャマイカン・シンガーの個性が生きているという印象です。
上記以外にもいい曲が揃っていて、PPMが好きな方は多分持っていると思いますが、特にPPMが好きでなくてもフォークが好きでなくてもお勧めです。
しかし、中古のLPというのはやはり中古だけのことはあります。
まず「Harder They Come」や「That's Enough for Me」の途中でビンビン針が飛びまくります。古いビニール盤は針が飛ぶ、というのを久しぶりに思い出しました。
さらに、なぜかジャケットに書いてある曲名がレコード盤に載っている曲名(収録されている曲名)と違うのが2−3曲あるし、ジャケットには記載されているジミークリフの1曲がなぜか収録されていない(脱力)。何で?