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60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く(時々乱読)

豪の野ネコ200万匹毒殺処分の真相

当ブログは時事ネタを扱うものではありません。

しかし今回は何日も頭から離れない件があるので書きます。

あらかじめお断りしておくと私はネコが好きです。大の猫好きです。

現在の2代目の茶トラ含めて20年以上ネコと同居していますが、イエネコのみならずライオン、ヒョウ、トラ、ピューマからイリオモテヤマネコツシマヤマネコに到るまで、ネコ科に所属する全ての動物に思い入れがあります。

ちなみに犬はじめ他の哺乳類も好きですが思い入れの度合いに差があります。

ネコ嫌い、猫好き嫌いの方はさっとスルーしていただければありがたいです。

さて、きっかけは10日ほど前のYahooのニュースでした。

「オーストラリア政府が200万匹の野ネコの毒殺処分を承認」

確かそんな名前のついた記事でした。

その時は全文を読む気になれませんでしたが、オーストラリアの在来生物を保護するため外来生物である野ネコを2020年までに200万匹駆除する、その目的でカンガルーの肉のソーセージに毒を入れて飛行機でばらまくことを政府が承認したということだけは分かり、非常に嫌な気分になりました。

私も年間膨大な数のネコや犬が日本国内の保健所で殺処分されていることは認識していますし、奄美大島世界遺産にするべく3000匹のネコを殺す計画があることも知っています。

それぞれ憤りの対象ですが、オーストラリアの話の何がとくに衝撃的かと言えばその殺処分対象数の大きさもさることながら「毒殺」という凄惨な方法を用いるという点です。

そもそも好物に毒を入れて殺す、という方法は甚だ卑怯に思えます。(ちなみに自分は蟻を殺すのも毒殺は避けたいので極めて原始的な「つぶす」という手段に訴えます。自分の身に置き換えて、上から何かが降ってきて潰される方が、毒殺されるよりましだからです。)

お腹が空いている時に藪で見つけた美味しそうなソーセージが毒入りとか手段が極めて悪質です。

しかも母ネコは大体食べ物がある時、まず仔猫に食べさせる。
自分の大切な仔猫に毒とは知らず食べさせる母ネコ、悲しすぎます。

何日も頭を離れなかったため、仕方なく英文記事で詳しい情報を検索してみました。
分かったことは以下の通りです。

オーストラリアでは野ネコ(Feral Cats)が過去200年の間に増え続け、現在全土に200万匹から600万匹生息している。

野ネコは人間社会と関わらずに生きるネコで性格も行動もイエネコとは違う(と言っても捕まった檻の中の野ネコの写真を見ると我が家の猫が獲物を狙った時の顔にやや似ています)。

もとはオーストラリアに移住した人間が持ち込んだ飼い猫が野生化したのとともに、ネズミ駆除の為に意図的にネコを野に放していたという側面もある。

数が増えるにつれ、オーストラリアの在来生物である哺乳類、鳥類、爬虫類、昆虫が彼らの捕食のターゲットになり始めた。

これまで捕食者がいなかった生物は簡単に、狩猟に長けた野ネコの餌食となった。すでに20種以上の哺乳類が野ネコの捕食によって絶滅し、さらに一部のマーモットや黒足ロック・ワラビーを含め124種の生物が絶滅の危機にある。

危機感を持った豪政府は当初は野ネコの「捕獲・避妊・解放」という穏便な手段で個体数を減らす方法を試みたが、爆発的な繁殖力には到底追いつかず、一方では莫大なコストがかかった

殺処分によって生態系から野ネコを削除しようという動きは2014年ごろから本格化した。当初、フランス女優のブリジット・バルドーを始めとする動物保護活動家が猛然と抗議している。

捕獲・安楽死という方法がとられていたが、やがて銃殺、野ネコを殺した者に懸賞金を払うまでにエスカレート、それでも数百万を超えさらに増え続ける野ネコの数を減らすことができない。

それで今回の毒ばらまきという手段が政府公認プロジェクトとして発足する。

カンガルーの肉に鶏の脂肪分を混ぜたソーセージに毒薬を混ぜ小型飛行機(あるいはヘリ)で野ネコが生息する藪を中心に投下する。

ここで私は今回使われるCuriosity Bait (PAPPとも言われる)という名の毒薬について知りました。

近年440万ドル(5億円近く)かけtて開発された毒で、今までの毒薬でより人道的(humane)に」苦痛なく死なせることができるといいます。

毒を摂取した動物は、血液の中の酸素の流れが減少し数時間で極度の疲労感、眠気に襲われ身動きが取れなくなり、運が良ければそのまま眠るように死に至る

運が悪ければ意識があるまま体を動かせずに数時間倒れたままという状況になる。

少なくとも、長時間のたうちまわって血反吐を吐きながら絶命するという凄惨さではないようです。

が、運が悪ければ意識があるまま動きが静止し他の捕食者(鳥やディンゴ、他の野ネコなど)に食べられてしまう。

仔猫が隣で食べられていても、自分の体の自由も失った母ネコには助けることができない。

なお実験では苦しむこともなく死に至った野ネコの例複数が実験者によって記録されていますが、ある獣医によればそれでも従来型の毒と同様に苦しみを伴うというデータもあります(願わくば獣医のデータが古いものでそれ以降に改良されてより安楽型になっていることを願います)

正直「オーストラリアを代表する在来の生物を守るため」という政府の見解には疑問を感じます。

なぜ外来種を駆逐してまで在来種を守らなくてはならないのか。

家畜への被害など何らかの経済的な損失があるのか。

要は在来種の生物か野ネコのどちらを取るかで、人間様が前者を選択したということなのか?

フクロオオカミの絶滅を許しておきながら今更「外来種」だからと野ネコの大量殺戮。

外来とは言え、そもそも持ち込んだのは移住した白人。

その白人自体が先住民族アボリジニを迫害してきた最大の外来種という矛盾。

また豪政府は「野ネコとの戦争」と銘打って人間が野ネコと互角なはずがないのに、一方的な大量殺戮をまるで聖戦のように正当化しているのも気に入りません。

実験室で死なせた(安楽死)野ネコも前と後ろの脚で掴んで吊るしたポーズで実験者がスマイルを浮かべた写真をアップしており、元はと言えば間の都合で増え続け、殺される不運に陥った生物に対するリスペクトが全くない。

これは感情論になるのでこの辺にしておきましょう。

さてまとめてみると

  • オーストラリアの野ネコは数百万匹で、その繁殖力により在来種の生物が絶滅の危機に晒されている。
  • これまで政府は避妊や捕獲・安楽死などの手段を講じてきたが時間とコストにより野ネコの被害の拡大に追いつくことができなかった。
  • 今回毒を入れた食べ物をばらまくことで、2020年までに200万匹の殺処分を目指している。
  • 使う毒はできるだけ苦痛を与えない「人道的な」殺し方をするという目的で開発されたPAPPという毒薬である。

元はといえば広い土地だからと放し飼いにしたり、後先考えずネズミ退治のために放したりしたオーストラリア人に対しては怒りしかありませんが、それでもできるだけ苦痛を与えない方向で努力をしていないわけではないということは分かりました。

 

人間様の身勝手で死んでいく野ネコたちが、PAPPとやらの狙い通りに苦しまず、眠るようにあの世に行くことを祈るしかありません。