ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックを聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く(時々乱読)

CSN&Y『デジャヴ』こそは西海岸ロックの最高峰

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表題で言い切ってしまいましたが、まさに70年に発表されたこのアルバムこそ、60年から70年代の数多くのアメリカン・ロックの頂点を極めているのではないかと思います。

この『デジャヴ』、前回取り上げた『CSN』とライブの『4-Way Street』を聞いておけば、CSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングは一応押さえたと言えるでしょう。

「キャリー・オン(Carry On)」

この曲はティーヴン・スティルスの作で例によって恋人との別れがテーマですが、「青い目のジュディ」もこの曲もリズムとメロディがからっとしているので悲壮感がありません。

ギターのソロ、ベース、中盤から入るキーボード全てティルスが担当。

ギターもキーボードも実にいいです。

ティルスナッシュとともにパーカッションでも入っていて、コンガのリズムが実に心地いい。

当時はオープニングが阿波踊りに似ていると言われていて、あらためて阿波踊りを聞いてみたら、何げに似てないこともありませんね。

 ちなみにYouTubeにはステージのもアップされていましたがそちらはかなり酷い。

ティーチ・ユア・チルドレン(Teach Your Children)」

この曲を嫌いな人がいたらお目にかかりたい、というぐらい好きな曲です。

胸を締め付けられるような切なく美しい歌詞。

ホリーズ時代にグラハム・ナッシュ作った曲とのことですが、その若さで親子のすれ違いの中にある愛を見事に形にしています。

美しく優しいハーモニー。
全体を通じて印象的なスティールギターはジェリー・ガルシアです。

学生時代に内輪でコンサートをやった時に最後の曲でお客さん含め全員で大合唱になった懐かしい思い出の曲でもあります。

この曲、当時の女子中学生の間で大ヒット(おそらく日本だけ)になった小さな恋のメロディ(Melody)」という小学生の恋愛を描いたイギリス映画で、最後にトレーシー・ハイドとマーク・レスター演ずるカップルがトロッコに乗って草原の彼方に去っていくエンディング・テーマでも使われていました。


 


次の「オールモスト・カット・マイ・ヘアー(Almost Cut My Hair)」デヴィッド・クロスビーの作。
地味ながら良い曲。

反体制のシンボルである長髪を切りそうになって思いとどまった、という歌です。

ティルスヤングのギターが絡み合っていく絶妙さ。
グレッグ・リーヴスのベースもナイスです。

 

4曲めの「ヘルプレス(Helpless)」ニール・ヤングらしい曲です。

何がヘルプレスなのかは判然としませんが、「心の中ではまだ居場所を探している」と歌っているので故郷のカナダを離れてLAで音楽的成功を得た彼が、ここは自分の居場所ではない、と歌っているように思えます。
ちょうどダン・フォゲルバーが故郷の「イリノイ」に語りかけているように。

「青い、青い窓、黄色の月が昇る。空を横切る大きな鳥の影」と歌われる北オンタリオの情景が美しい。
この曲に入って入るティルスのギターもピアノも実にいい。


ウッドストック(Woodstock)」

映画『ウッドストック』のオープニング、コンサート用の櫓を組み立てているシーンで流れていて印象深かった記憶があります。
作詞作曲はジョニ・ミッチェル。当時のナッシュの彼女ですね。

「僕らは星屑、僕らは黄金。僕らは数十億年前の炭素(ダイアモンドだよね?)」というリフレインや「ショットガンを搭載した爆撃機が、空を舞う蝶々に変わるのを夢想した」という歌詞に溢れていているオプティミズムに当時ウッドストックの集まった人々の空気を感じさせます。

イントロの特徴的なギター・リフはニール・ヤングでしょう。
途中のギターソロやナッシュのエレピも好き。
何度聞いても飽きない元気をもらえる曲です。

 


CROSBY, STILLS, NASH Woodstock 1971

 

6曲目の表題曲「デジャヴ(Deja Vu)」クロスビーの作。

「僕らは前にここにいたことがある」というリフレイン。
クロスビーはインタビューに答え、自分は輪廻転生、あるいは生命のエネルギーの再生を信じていると語っています。

フランス語由来の「既視感」という単語に初めて出会ったのはこの曲でした。

このアルバムは全てハーモニーの美で構成されていますが、「デジャヴ」は特に難しいメロディのハーモニーが決まっています。

ギターもさることながら、この曲の聞きどころはティルスのベース。中盤からのベースのソロ、一聴の価値ありです。

この指のポーズって、日本の中学生か?


CSNY - Deja Vu (Studio)


アワ・ハウス(Our House)

グラハム・ナッシュが当時ジョニ・ミッチェルと一緒に暮らしていた家の歌です。
その日に買った花瓶に花を活け、庭にはミッチェルの2匹の猫。まったりと流れる時間。
人生は大変なことが多いけど、君といると癒される。

ピアノ、ベース、ドラムをバックにコーラスで歌われるとても優しくて可愛い小品です。

 


Crosby, Stills, Nash & Young - 07 - Our House (by EarpJohn)

 

8曲目の4+20」ウッドストックのアルバムの中で触れましたので、ここでは割愛。

 

londonvixen.hateblo.jp

 

カントリー・ガール(Country Girl)

ニール・ヤングの曲。

実は個人的に4人の中でヤングの曲が一番苦手というか馴染めない(もちろんソロ・アルバムも持っていない)ので個人的にはあまり好みではないものの、この曲が一番好き!という人は多いのではないか。

というか、音楽好きには一番好まれるナンバーのような気がします。

メランコリックなメロディからドラマチックな展開、中盤から入るピアノ、後半のハーモニカが印象的です。

 

最後の曲「エヴリバディ・アイ・ラヴ・ユー(Everybody I love you)」ティルスヤングの合作で、ヤングを除く全員のコーラスによる力強いヴォーカルです。
リーヴスのベース、ティルスのギター・ソロ、リズム・ギターの歯切れの良さが好き。


まとめ

イーグルスバーズ、バッファロー、ポコ、L&M等、西海岸を代表するミュージシャンは数多く、それぞれ好きなアルバムも有名な作品も数多いのですが、1枚決定打を選べと言われたらやはりDeja Vuに帰結してしまうような気がします。