ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックを聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く(時々乱読)

夏だ!祭りだ!『ウッドストック』その 2ーCCR、ジャニス、ザ・フー

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今晩は、ロンドンVixenです。

先週に続き今回はウッドストック・ボックスの2枚目です。

1969年8月に開かれた「愛と平和の祭典」ウッドストックの音楽フェスは40万人の若者を集めた一大イベントで会ったことは先週お伝えした通りです。

今回2枚目の出演者は
キャンド・ヒート
CCR
ジャニス・ジョプリン
スライ&ファミリー・ストーン
ザ・フー
なかなか豪華な顔ぶれです。

キャンド・ヒート(Canned Heat)

キャンド・ヒートはアメリカのブルース・ロックバンドで、ウッドストックの参加メンバーは
ボブ・ハイト(v)、アラン・ウィルソン(g、harmonica、v)、ハーヴェイ・マンデル(lg)、ラリー・テイラー(b)、アドルフォ・ド・ラ・パラ(d)

2日目の夕刻、ヤスガー農場が夕陽に染まる中ヘリコプターで会場に駆けつけました。

開口一番「Oh My Goodness 」と言っているので聴衆の巨大な規模に仰天したのでしょう。

「Leaving This Town」は、ゴテゴテのブルース・ロックバンドというイメージを裏切らない曲です。

ズッタ、ズッタというブルース系の重いシャッフルは文句なしに好きです。

ギターのソロが泥臭いところもたまらなくいい。

「Going Up the Country」はのちにシングル・カットされた短い曲。

ブルース・ミュージシャンのヘンリー・トーマスの曲のカバーです。

「さあお前、早く荷物をまとめろよ。今日出発するからね。
どこへ行くか分からないけど。アメリカだって出て行くかもしれない。
新しいゲームが始まっていて、俺はそれに参加したくないからね」
という反体制的な歌詞にアレンジされています。

2台のギターがビュンビュン飛ばしていて、リズムセクションも気合い入っています。
ドラムのシンバルのカンカンいう音が小気味いい。

CCRクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル

CCRの曲は私が中学ぐらいのときはラジオでもしょっ中かかっていました。
その頃ほんの一時期ギターを手にしたのですが、コード進行が単純な「雨を見たかい」プラウド・メアリー」などは格好の練習曲でした。

一番好きだったのは「コットン・フィールズ」だったりするのですが。

いかにもディープ・サウス(深南部)のバイユー・カントリーを思わせる曲の数々ですが、トムジョンフォガティ兄弟も他の二人もカリフォルニアの生まれ育ちなのが面白いですね。

 

「コモーション(Commotion)」グリーン・リヴァー(Green River)」は共にジョン・フォガティの作でのちにアルバム『グリーン・リヴァー』に収録されました。

特徴なギター・ソロで始まるコモーション」はアップビートの後ノリの曲で、都会の慌ただしい生活のストレスを歌っています。

「グリーン・リヴァー」CCRの代表的な曲の一つ。

昔懐かしい川の光景。ナマズに噛まれた丸太。ウシガエルの鳴き声。トンボ。月の光の下で踊る裸足の娘たち。

緑色に濁ったバイユー(米南部の川)やミシシッピ・デルタ、スペイン苔が垂れ下がる木々といった光景を想像できる歌ですが、モデルになったのはジョン・フォガティが子供の頃によく遊んだカリフォルニアの川べりとのこと。

久しぶりに聴きましたが、独特のギターのフレーズと訛ったような歌い方が忘れられない曲です。リズムは裸足の娘でなくても踊り出したくなります。

「ナインティ・ナイン・アンド・ア・ハーフ」ウィルソン・ピケットのカバーで「お前の愛が昼も夜も100%ほしい。Ninety-Nine and a Half (99.5%)じゃダメだ」と恋人にいっている曲。

ブルース・ナンバーですがあまりCCRらしくない曲です。

「I Put a Spell on You」ジェイ・ホーキンズのブルース・ナンバーのカバー。
ジョン・フォガティの歌唱力、ギター・ソロの魅力がいかんなく発揮されています。

 

CCRは1972年に解散。ジョン・フォガティスチュ・クック(b)ダグ・クリフォード(d)の音楽的見解の相違との事ですが、おそらくジョン・フォガティのワンマンバンドでやって行くのに嫌気がさしたのでしょう。

作詞・作曲、リード・ヴォーカル、リード・ギターをやっているフロントマンのジョンは我儘を通そうとする部分もあったでしょう。

現在アメリカでもツアーをやっているCCR(Creedence Clearwater Revisited) はスチュとダグが参加しているバンドです。

ジョンは現在もソロで活動。ジョンの兄トム・フォガティはしばらくソロ活動をやっていましたが、輸血によるHIV感染という不運にみまわれ、48歳で他界しています。’

CCRの出演箇所を網羅した47分の長い映像です。


Creedence Clearwater Revival (Live at Woodstock '69) FULL

 

ジャニス・ジョプリン(Janis Joplin)

前にも書きましたがジャニス・ジョプリンは女性シンガーとして私の中で不動の一位を占めています。

あくまでも独断ですがブルースを歌わせて彼女の右に出る女性ヴォーカルは皆無でしょう。

さてジャニスは日曜の午前2時からの出演でした。

このCDでは3曲のみの抜粋です。

「トライ(Try)」
バック・コーラスもブラス隊も入ったフル装備のバンドをバックに、ジャニスの声はまさに場を圧しています。本当にうまい。
ギターのカッティング・ワーク、ベースの動き、キーボードの入り方もいいです。

「ワーク・ミー・ロード(Work Me Lord)」
私はここで独り、誰にも愛されずに。
どんなに頑張ってもなぜか元の場所に引き戻されている毎日。
神よ、私がここにいることを忘れないで
どうか見捨てないでください。
という悲痛な歌詞を心の奥から絞り出すように歌っています。

「ボールとチェーン(Ball & Chain)」
のちにジャニス・ジョプリンの代表曲のひとつになった曲。
前曲と同じく打ちのめされて失意の底にいる人間の歌で、何をやって上手くいかない、ボールとチェーン(囚人をつないでおくような鉄の球と鎖)がいつも自分を引きずり落とすという歌。
後半、無伴奏で節をつけて語っているところが凄い。まさに鳥肌ものです。

ジャニスはこの日絶好調ではなかったようで、そのステージを見たザ・フーピート・タウンゼント

モントレーの彼女はよかったけど、今日は絶好調とは言えなかった。出演まで散々待たされてその間にヘロインをやっていたせいだろうね。だけど不調の時でさえ彼女は信じられないぐらい凄いよ」

と記しています。

ジャニス・ジョプリンウッドストックのわずか14ヶ月後、ジミ・ヘンドリックスの死の1ヶ月後、26歳でこの世を去っています。

ジャニスのウッドストック動画(出演箇所の抜粋)


Woodstock - 16/08/1969 - Janis Joplin

 

スライ&ザ・ファミリー・ストーン(Sly and the Family Stone)

スライ・ストーンとその一家はサンフランシスコ出身のバンドで、ウッドストックでは「Dance to the Music」を含む3曲のメドレーをやっています。
そういえば昔々ディスコで聞いたような。
好みのジャンルかというと微妙なので軽く飛ばします。

ザ・フーThe Who)

2枚目のラストはThe Who
ロック・オペラ『トミー』のラスト「俺たちはしないよ(We’re Not Gonna Take It)」からカットされた「僕を見て、僕を感じて(See me, feel me)」です。

指導していた宗教団体の信者たちの造反にあって全てを失った三重苦の青年トミーの内なる叫び。「See me, feel me, touch me, heal me」の有名なリフレインで始まる美しい曲。ロジャー・ダルトリーのヴォーカルにタウンゼントの声が綺麗にハモっています。

ザ・フーは午前4時からの出演でこの「See Me, Feel Me」を演じている最中に、夜が明け太陽が昇ってきて会場に不思議な効果をもたらした、という逸話がウィキペディアにあります。このシーンはウッドストックの記録映画にも挿入されているらしい(憶えていません)。

いい曲ですが、個人的にザ・フーの楽しみはキース・ムーンのドラミングとエントウィッスルの自由闊達なベースなのです。

その点でこの曲以外にもう1曲楽器を生かした曲をCDに収録して欲しかった、ということでWoodstockで演じた同じく『トミー』スパークス(Sparks)」の画像を貼ってみました。

 


The Who - Sparks (Woodstock)

おまけ

ジャニスの「ミー・アンド・ボビー・マギー」をバックにウッドストックの会場の様子。会場の雰囲気が伺えます。

 


Bobby McGee ~ Janis Joplin ~ Woodstock '69