ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックを聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く(時々乱読)

アイルランドが生んだ伝説のギタリスト、ロリー・ギャラガーの『Calling Card』

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今晩は、ヴァーチャル・パブのロンドンきつね亭です。

今日のミュージシャンはアイルランド出身のロリー・ギャラガー。

よく聞く逸話によれば、ある人がジミー・ヘンドリックスに「世界一偉大なギタリストと言われるのはどんな気分ですか?」と尋ねたところ、「それならロリー・ギャラガーに訊いてみろ」という返事が返って来たとか。

間違いなく世界のトップクラスの実力をもつブルース・ギタリストでありながら知名度では今ひとつの感があります。

コーリング・カード』(1976)は8枚目のアルバム。

ディープ・パープルにいたロジャー・グローヴァーがギャラガーと共同でプロデュースに参加しています。

今日はやはりアイリッシュ・ウィスキーですね。ブッシュミルズオンザロックでまったりとおくつろぎください。

ドゥー・ユー・リード・ミー(Do You Read Me)

ドラムのビートの間にギターが特徴的な入り方をしてくる一曲目は「Do you read me」。

心地よくて好きな曲です。ところによってイーグルスの「Life in the Fast Lane」に似ていたり、サビがバドカンの「Rock Steady」に似ていたりとブルースというよりもロックの曲調ですが、ギターと歌はブルースです。

途中のギターのソロがすごくいい。ギターがのびのびと歌っている感じです。

キーボードとの掛け合い、最後のユニゾンも楽しい。

ロリー・ギャラガーの声は、優男風のルックスに似合わずブルース・スプリングティーンに近いしゃがれ声で、この曲には合っています。

アルバムを通してみるとそれほど歌が巧いとは思えないのですが、この曲のボーカルには不思議と引き込まれます。

 

ライブではすさまじい神業を見せています。


Rory Gallagher - Do You Read Me (Rock Goes To College, 1979)

 

2曲目のカントリー・マイル(Country Mile)はロカビリーというのでしょうか。
エルヴィスがやりそうな、当時の表現で言えばイカした曲ですね。
これも声質に合った曲です。
短いピアノ・ソロがいい。後半のギターのフレーズはジェフ・ベックを思わせるものがあります。
ドラムの音が何となくバタバタしていますがそういうものなのでしょうか。

コーリング・カード (Calling Card)」

表題作の「コーリング・カード」。私的にはこのアルバム中最も好きな曲です。
スタジオ録音のはずなのに、どこかのジャズクラブで演奏しているような雰囲気を醸し出しています。

ジャズの要素のあるブルースで、ギターもピアノもアドリブで掛け合いをやっています。

この曲のピアノ・ソロもギター・ソロ秀逸です。ベースの動きも好きです。

 

シークレット・エージェント」。シャッフルのノリのいい曲です。
自分の彼女がシークレット・エージェントを使って自分を見張っている。家の前で待っていて、どこに行っても付いてくる。

うまくいかない恋だとか失恋の歌が多いブルースの中にあって異色の歌詞です。

右のスピーカーからくる低音のギターが左のスピーカーの高音のギターと絡んでツイン・リードのような効果を出しています。

そういえば曲調もツイン・リードで有名なウィッシュボーン・アッシュの「ジェイル・ベイト」に似てる気が。

 

次の「ジャック・ナイフ・ビート」はファンキーな曲。

独特のカッカッというギターとドラムのシンコペーションを効かせたイントロ、その後のギターソロがカッコいい。

スタジオでジャム・セッションをやっている感じで、アドリブでやっていると思われるギターとピアノの絡みが絶妙です。

このアルバムのあと、全5作のアルバムで一緒にやってきたキーボードのルー・マーティンとドラマーののRod de'Ath と袂も分っていますが、ここで聴く限り息はぴったり合っていると思うのですが。ロリー・ギャラガーはこういうアドリブがかなり好きで得意としていますね。

 

エッジ・イン・ブルー(Edge in Blue)」。この曲、イントロのギター・ソロの美しさ、ロック史に残るレベルではないでしょうか。

むしろギター・ソロの延長でインストゥルメンタルの曲として入れてほしかった。

 

バーレイ・アンド・グレープ・ラグ(Barley and Grape Rag)

最後の「Barley and Grape Rag」はアメリカ南部のカントリ―・ブルースの原点を思わせる曲です。
マディ—・ウォーターズ辺りのブルース・ミュージシャンに影響を受けてきたロリー・ギャラガーらしい。
Barleyはウィスキーの原料の大麦、Grapeはワインの原料のブドウ。彼女に冷たくされた、つまんねえ、今夜は街に出かけてとことん酔いつぶれてやるぞという歌です。
1930年代のビンテージのリゾネーター・ギター、縦乗りベースとシンコペ満載ドラム、ハーモニカ、ピアノで昔の酒場の様子が目に浮かびます。
ステージではギター一本でやっている画像が残っていますが、そちらもなかなか味があります。


barley and grape rag " rory gallagher live at rockpalast 1977

最後に

ロリー・ギャラガーのギターの音は一度聞いたら忘れられません。
洗練されてないのにカッコいい、まさにブルース・ギターの王道を受け継ぎ、次世代につないだ人という印象です。

演奏を生で見たかったと思います。
残念ながら彼は1995年に47歳の若さで肝臓障害で命を落としています。飲酒が主な原因だったというのもアイルランド人らしいとも言えるでしょう。