ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックを聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く(時々乱読)

初期のジェフ・ベックが堪能できるヤードバーズの「ロジャー・ジ・エンジニア」

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今晩は。ロンドンVixenです。


今回はヤードバーズThe Yardbirds)の「Roger the Engineer (ロジャー・ジ・エンジニア)」(1966年)で、ジェフ・ベックが参加した最後のスタジオ・アルバムです。


ベック以外のメンバーは、キース・レルフ(v, ハーモニカ)、クリス・ドレヤ(rg, piano)、ポール・サムウェル・スミス(b)、ジム・マッカーティ(d、パーカッション)。   

では12全曲中印象に残った曲を見て行きましょう。
   

ロスト・ウィメン(Lost Women)

1曲目はアップテンポのブルースで、耳に馴染んだメロディですがシングル・カットはされていないらしい。


インストゥルメンタルでドラムが刻むリズムにギターとオルガンのユニゾンが入ってきたと思ったら、オルガンではなくレルフのブルースハープ(ハーモニカの一種)らしい。かなり表現力のあるハーモニカです。

この曲のボコボコ音のベースが結構すごい。


オーヴァー・アンダー・ザ・サイドウェイズ・ダウン(Over Under the Sideways Down)

 

スコットランド民謡のバグパイプのような音色のギター・ソロで始まるブルース・ポップ。
チャック・ベリーの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」にヒントを得たとWikiにありますが今ひとつピンときません。

この曲でジェフ・ベックはベースとリード・ギターを兼任しています。
ヴォーカルのメロディを追っていくギター、終盤のギター・ソロともに見事です。


いつも一人ぼっち(Nazz are Blue)

シャッフルの楽しい曲で、珍しいことにジェフ・ベックがリード・ヴォーカルで歌っています。中盤のギター・ソロは申し分なく美しい。

 

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画像はCDより引用

恋の傷あと(Rack My Mind)

リズムと節回しがズンドコ節で、ドリフの面々が浮かんでしまう(笑)というネックがありますが、この曲の中盤と終盤のギター・ソロの華麗さは必聴です。

あまりに終盤のギターがカッコよすぎてもっと続いて欲しいと思っているうちに曲が終わってしまい残念なほどです。

ジェフズ・ブギー(Jeff's Boogie)

何と言ってもBeck's Boleroと並んでジェフ・ベック初期を代表する名曲の一つです。
スウィングの効いた楽しい曲で、チャック・ベリーのギター・ブギーをアレンジしたとのことですが、アドリブ部分も多いのではないでしょうか。

たたみかけるギターのテクの凄さもさることながら、多重録音でリードが絡んでいるような演出もにくい。

ところどころに「ピンポンパンポン(時刻をおしらせします)」とか「メーリさんのヒッ・ツッ・ジッ」みたいなフレーズが入っているのも一興。


このアルバムには他に「フェアウェル(Farewell)」「空しい人生(I can't make your way)」のような英国らしい美しい曲や「さすらう心(Turn Into Earth)」のような地の底から響くような迫力のある曲も入っています。

 

忘れていけないのは、このアルバムのリマスターCDにはジェフ・ベックジミー・ペイジがツイン・リードで入っていた時代の2曲が入っていることです。

「幻の10年(Happenings Ten Years Time Ago)」
「サイコ・デイジーズ(Psycho Daisies)」

「幻の10年」はギターはもちろんのこと、ベースの動きがやたらカッコいいのでクレジットを見たら当時セッション・ミュージシャンだったジョン・ポール・ジョーンズでした。

 

「サイコ・デイジーズ」は二人のリードの絡みが秀逸です。

 

ツイン・リードといえば、アントニオーニの映画「欲望(Blow Up)」でもベックとペイジがツインで出ていて、こちらもめちゃカッコいいです。

この映画でギターを壊すシーンを演じてから、ベックはステージでギターを壊すのが気に入ってしばしばステージ・パフォーマンスでやっていたらしい。(個人的にはピート・タウンゼントといいキース・エマーソンといい、パフォーマンスで楽器を壊すのは見苦しいので好きではありませんが、破壊が一つの表現だった時代なのかもしれません。)

ちなみにこの映画の中でジェフが壊しているのは、もともと出演予定だったスティーヴ・ハウ所有のギブソン(多分レプリカ)という話です。

 


Jeff Beck and Jimmy Page(The Yardbirds) 1967.mpg

 

蛇足

私的には現存するギタリストの最高峰と思うジェフ・ベックとロック界最強シンガーのポール・ロジャーズが7月にLAでコラボのコンサートを演ることになっています。いち早くチケットは取ったものの急な仕事が入ったらどうしよう、と今からハラハラドキドキです。

蛇足その2

この記事を見てくださっている方は100%ご存知ないと断言できますが、大昔ジェフ・ベックをモデルにした少女漫画を読んだ覚えがあります。野上けいというマンガ家さんの「星がひとつ」という作品で、貴族の娘を婚約者にしているクラプトン風の青年と孤独な成り上がりのジェフ・ベック激似の若者(笑)が何故かライバル関係にあるというストーリーです。ベック(らしき人)は寄せ集めのメンバーでバンドを作っているけれど到底叶わない。ところが最後に観客をあっと驚かせる曲目を演じてすさまじい喝采とともに勝者となる。その曲目も結構笑えるんですが。なんせ昔の少女漫画、他愛ないにも程がある筋書きですが、少女誌「りぼん」にジェフ・ベック激似の主人公が出てきたときには結構びっくりしました。