聴けばハワイに行きたくなる!ロギンス&メッシーナの『フル・セイル』
今晩は。ヴァーチャルパブの倫敦きつね亭です。
先日のCSNに続き、バッファロー・スプリングフィールドつながりで、ロギンス&メッシーナに行ってみたいと思います。
バッファロー解散後のジム・メッシーナの活動、ケニー・ロギンスとの出会いはWikipediaなどに詳しく載っていますのでここでは割愛いたしましょう。
私的にL&Mは70年代の好きなミュージシャンのランキングでトップ10入りは間違いなく、アメリカ部門ではおそらくトップ3に入るだろうという、なかなか思い入れのあるデュオです。
L&Mの3枚目のアルバム、飲み物は1曲目にちなんでラム酒を使ったカクテルにいたしましょう。マイタイはいかがでしょうか。
ハワイ名産スパムのおにぎりもご用意しております。
気分はもう南の島
一曲目の「ラハイナ(Lahaina)」はリコーダーではじまる陽気なカリプソ風の曲。
マウイ島のラハイナでのんびりとラム酒のカクテルを待っていたら、ムカデがやって来ます。
サトウキビが育つラハイナ
時がゆっくりと過ぎていくラハイナ
マンゴーが甘いよ、ラハイナ
だけどムカデが足の上を這い回る
といった歌詞に、曲を通して奏でられるリコーダー、パーカッション、さらにスティール・パンの澄んだ音色がトロピカルな雰囲気を盛り上げます。
ハワイに行きたくなるというより、すでに南の島にいる気分ですね。
さらにこのアルバムの中盤には「Coming to You」というレゲエ曲が入っています。
ファンキーな「You Need a Man」という曲のあとに間隔をあけずメドレーのようにレゲエが入ってくるのが面白い。
レゲエはレゲエなんだけど、この曲はフルートが入って垢抜けた感じがします。
「ラハイナ」も「Coming to You」にしても、ジム・メッシーナの声はどちらかというとカントリー・ミュージック系のつぶれた声なのですが、こうしたラテン音楽にも違和感がありません。
「Watching the River Run (川の流れのように)」
これはいい曲です。
時間がない方はこの曲だけ聴いてお帰りいただいてもいい位です。
日本で発売当時に「川の流れのように」の邦題がつけられていました。
今となっては秋元康か美空ひばりの顔しか連想できないですが‥。
いえ、もちろんあちらもすばらしい曲です。
もう過去のことで悩まなくてもいい。
君は一人じゃない。僕は川、君は川岸。川の流れを一緒に見つめよう。
流れるにつれ、過去はひとつひとつ遠ざかっていく。
僕たちの人生は、まだ始まったばかり。
川の流れを見てその音に耳を傾け、その流れのように経験を増やし前を向いて行こう。
大まかな内容はこんな所です。
アコースティック・ギターとフルートの美しいイントロに続き、ケニー・ロギンスの包み込みようなソロ・ボーカルが始まります。
アコギのこのフィンガリング・ノイズがいいですね。
やがてメッシーナのマンドリンが入り、短いフルートとマンドリンの間奏につづきメッシーナがコーラスに参加。
この辺りから小川にだんだん広がりが出てきて、古い柳の下を流れ、恋人達に優しい歌を歌ったりする。
コーラスの間からマンドリン・ソロ、メッシーナとロギンスのボーカル・ソロがさざ波のように立ち上がります。
二度目のリフレイン "and it goes on and on' あたりからは、バックも入ったフルコーラスでエレキ・ギター、アコギ、ドラムス、ベース、フルート、マンドリンが総力で力強く、今や大河となって海に向かう川を表しているかのよう。
L&Mのアルバムは、各々の得意分野の曲が併存している部分が多いのですが、これは二人の合作のよる美しい名曲です。
「Pathway to Glory」
アメリカではこのアルバムで一番評価の高い曲のようです。
インストゥルメンタルの部分が長く、ドラムスとベースがリズムを刻む中、まずギターとピアノ、次いでハーモニカ、ヴァイオリン、エレキギターと次々にソロが入り、最後はエレキギターとヴァイオリンが絡みます。おそらくソロ部分はインプロビゼーションでやっているのではないかと。
アル・ガースのヴァイオリンが美しい。
L&Mの曲にしては英国プログレに近い曲という印象で、アメリカで一番高い評価というのは意外な気がします。
「Sailing the Wind」
船のロープの摩擦音と微かな波の音。
イントロから曲を通して効果音を入れているこの曲は、アルバムのフィナーレにふさわしい幻想的な航海の風景を歌っています。
自分は空の高いところをスカイ・シップで飛びながら、何マイルも下の海上で航海をしている自分自身を眺めているというファンタジックな歌詞。
ゆったりとしたメロディーとロギンスのボーカルが、帆をはらませる優しい風を感じさせ、エレキギターのソロとサックスが日没に近づきつつある海の寂寥感を漂わせています。
ラリー・シムズのベース
最後に特筆したいのがラリー・シムズのベースです。
シムズはL&Mのデビュー作からすべてのアルバムに参加しているベーシストで、このアルバムでもオープニングの「ラハイナ」から「Sailing the Wind」に至る全曲で実に存在感のあるベースを聴かせてくれています。
きつね亭的にはとくに「Didn't I know you When 」のベースのノリが好きです。
まとめると
アルバム・ジャケはもとよりレゲエ、カリプソなどでトロピカル・テイストを全面に出してはいるものの、それに終始した作品ではありません。
ロックンロールあり、ファンキー系もカントリー寄りの曲も弾き語りもあり、と盛りだくさんになっている。雑多なものが混在しているようでそれぞれが面白く、アルバム全体を見た時に多様性が魅力になっている。
アルバムを何度か通して聴いても飽きがこない作りになっているという点で、プロデューサーとしてのジム・メッシーナの狙いは成功していると言えます。