ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックをひたすら聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く

中古CDで再会したトッド・ラングレンは真実(ほんまもん)のスターだった

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今晩は。ヴァーチャル・パブの倫敦きつね亭です。

先日のブログで、ヘイト・アシュベリーのミュージックストア「アメーバ」ががっかりだった記事を載せましたが、懲りない私は同じ「アメーバ・ミュージック」のバークレイ店に行って参りました。

カリフォルニア大学バークレイ校の近くにあるこちらの店舗はアシュベリー店とは打って変わって中古のCD・ビニール盤が多く、品数も豊富、お値段もアシュベリーの中古CDとは段違いに安く、店員のお兄さんも場所柄かこちらのほうがフレンドリーというおまけ付きで、常連になりそうな予感。

安いとなると普段買わないアルバムまで大人買いするのが意思の弱い人間の性(さが)というもので、取りあえず16枚をゲットいたしました。

 

そのうち1枚が、こちらトッド・ラングレンのCD『魔法使いは真実のスター(A Wizard, A True Star)』で何と3ドル99セント(約450円)。

大昔にビニール盤を持っていたものの、数回しか聞かず(良さがいまいち分からないまま)いつの間にか断捨離しておりました。
再度チャレンジすることにいたしましょう。

 

一応ネットで評価を見てみますと、えらく日本でも評価が高いではありませんか。
しかもプロのミュージシャンが高く評価している作品らしい。
ハードルが高!

 

さて取りあえず3周、ぶっ通しで聞いてみましょう。

本日のカクテルはその名もフラミンゴ・レディ。
ウォッカカンパリシャンパンの薄紅色の美しいお酒です。

フラミンゴとゼン・アーチャー(Flamingo/Zen Archer)

フラミンゴ」はひたすら美しい曲です。

昔好きだった曲で、やはり今聞いてみてもいい。

電子ピアノとオルガンが奏でる軽快なリズムとシンセサイザーが作る鳥の囀りと羽音が非現実的な楽園のような独特の世界を作っています。

この曲のベースも面白い。

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この楽園のような世界は、しかし次の曲「ゼン・アーチャー」でいとも簡単に覆されてしまいます。

アコーディオン(に聞こえるがオルガンかも)のイントロから始まる不思議なタンゴ調のこの曲は葬送曲のようで、愛らしく美しい鳥が射抜かれて死んでいく様子が語られます。
この曲のベースのフレーズもいいし、ドラムもシンバルの音が効果的。

悲惨な歌詞にもかかわらず、「黄色い月が昇り」「桃色の美しい鳥」「銀の矢で射抜かれる」「川に血が流れ」「目を閉じる鳥」と絵画的な情景はあくまでも美しい。
政治的なメッセージのようにも、あるいはもっと普遍的に美しいものの滅びに対する哀惜を語っているようにも聞こえます。

ファンが騙された時にはサンセット通りへ (When the shit hits the fan/Sunset Blvd)

これはめちゃノリのいい曲。つぶれた歌い方、硬派のギターワークで最初正統派ロックかと思ったら、軽快なキーボードのあたりから楽しさ炸裂。

電子ピアノのピコピコー、ピコピコーがたまりません。電子ピアノ、ピアノ、シンセサイザーが総動員で、地味に後ろでキンコンいっているのはグロッケンピールですね。
あらためて思うのですがこのアルバム40数年前に出したとは思えない。多分今の20代の人が聞いても十分楽しめるんじゃないかと推察します。

ちなみに「The shit hits the fan」は英語の慣用句で、文字通りウ◯チが扇風機の羽根(ファン)にぶつかって拡散されてしまったような大惨事のことで、ファンクラブのファンとは関係ないはず。昔のロックのあるある誤訳かなーとも思いますが、トッドさんはひょっとしてファンとファンを掛けてるのかな?

愛に飢えて (Hungry for Love)

ブギウギのピアノが心地いい。それを支える重厚なリズム・セクション。
ギターのソロもいいですね。
ELPの「ベニー・ザ・バウンサー」を連想させる部分もあります。

たったひとつの勝利 (Just One Victory)

ピアノの弾き語りから始まるドラマチックで美しい曲です。
自分を馬鹿だという奴も居るかもしれないけど、自分は自分を信じて選択をしてきたことを知っている。
他の人が何を言おうと、たとえ失敗しようと、もう一度頑張ってみようよ。
と「そんなに世の中簡単じゃないし」と言いたくなる臭い内容の詞なのですが、心洗われるメロディと力強いボーカルによって希望と勇気を与えてくれる曲になっています。

これは名曲です。ふとモータウン系のミュージシャンがカバーしても案外いけるかなと思ったりします。

ギターソロもいいし、多重録音のハモリングもいい。ドラムも切れのよさも。

きつね亭的にはこの曲のベースライン、もろツボです。

最後に

何と言うか、次から次へと天啓のように音楽が閃いていく人のようですね。
その意味でシド・バレットとの共通点を感じました。

ただしゼロからユニークなものをどんどんアウトプットしていくというより、ロックンロールやハードロック、ブギウギ、R&B, ブロードウェイのピーターパンにいたるまであらゆる音を取り込みながら、次から次へ独特の世界を展開しているという印象があります。多才で多彩でありながら器用貧乏になっていないところが凄い。

上にも書いたように40数年経っても全く古さを感じさせません。

 

一度目に通して聴いたときには、取っ掛かりどころがない、もうやめようかと思いましたが2度、3度聴いていくうちにどんどん好きになっていく、どの曲も本当にいいなーと思ってしまう。

第1聴で「うわ、これ凄い。めちゃ好き」と思った人って、かなり耳がいいんだなと尊敬できます。

私のように1度でやめようと思った方もあと2回ぐらい聴いてみて下さい。すーっと曲の世界に取り込まれて行くことでしょう。