ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックを聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く(時々乱読)

ミュージシャン本人が買うなと言う名盤デイヴ・メイソンの『ヘッドキーパー』

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今晩は。ヴァーチャル・パブ倫敦きつね亭です。

今夜のCDはデイヴ・メイソン。

トラフィックのギタリストだった人ですが、スティービー・ウィンウッドがブラインド・フェイスに入る一足前に音楽的見解が合わないとして袂を分っています。

そもそもトラフィックは皆で一緒に曲を作る習慣だったらしいのですが、メイソンさん一人で作詞作曲してきては「お前はこれやって、お前はこれね」と仕切る傾向があったらしく、ウィンウッド以下トラフィックの面々が「私共は貴方様のバックバンドではございませんので悪しからず(=俺らオメーのバックバンドじゃねーし)」と言ったとか。以来他の著名ミュージシャンと組んだりしながらソロとして今に至っていますが、一時期フリートウッド・マックにいたこともあるらしい。

 

今回の『ヘッドキーパー』(1972)はソロ活動を始めて3枚目のアルバム。
前半(A面)はハリウッドのサンセットスタジオ、後半(B面)は同じくハリウッドのナイトクラブ、トゥルバドールでのライブ収録です。

スタジオ録音のバックコーラスにはリタ・クーリッジ、スペンサー・デイヴィス、グラハム・ナッシュ、キャシー・マクドナルドと豪華な顔ぶれです。

実はこのアルバム、デイヴ・メイソン本人はかなり不満だった様子。スタジオ5曲、ライブ5曲で構成も曲の内容も中途半端、不完全な状態で出されてしまったというのが理由で、契約に署名したのに「買うな」とファン宛のメッセージまで発表したらしい。

買うな、と本人が言っているアルバムってどうなの?
きつね亭は買うなという声明を知らずに70年代に買ってからLP、CDで楽しんでおります。このアルバムは一般の評価も決して悪くなく、聴かないでと言っているのはどうもご本人だけのような気がします。

さて今回はカリフォルニア産カベルネ・ソーヴィニヨンでいってみましょうか。

「トゥ・ビー・フリー(To be Free)」

1曲目はピアノの伴奏から始まる美しく明るいメロディの曲。途中でオルガン。

サビのハモリがいい。

過去の迷いを振り捨てて、男女がこれから向き合おうとしている時期。
恐いなら少し立ち止まっていいんだよ、時間をかけて心を解き放てばいい、と相手の女性に語りかけています。

前半分のハーモニーは自身の多重のようですが、後半ベースとドラムが入った後の力強いハーモニーは女性歌手を含む複数の声が入っていますので、リタ・クーリッジ達が参加しているのでしょう。

曲全体を通してピアノのこぼれる様な音色が美しい。

「ヒア・ウィー・ゴー・アゲン (Here We Go Again)」

小品だがこれもとても美しい。
アコギ、パーカッション(ネジ巻きみたいな音も)とマンドリン(楽器リストに載っていないけど入ってるはず)の澄んだ音色。
バックで高い声を出しているのはグラハム・ナッシュでしょうか。

「ヘッドキーパー(Head keeper)」

不思議なタイトルの表題曲。ヘッドキーパーってネット辞書で調べると「動物園の飼育係長」‥‥はい?

女性の一挙手一投足に強くなったり心細くなったり、活力を得たり死にたくなったり、彼女を奴隷のように束縛したり、天に昇るぐらい解き放ったり、だけど心を弄んだりしない純粋な気持ちを持っていて、という歌詞で、ようは恋する男の心境を歌っています。女性からみるとちょっと面倒な人ですね。

12弦らしいアコギとピアノの印象的なイントロで始まる曲は、中盤でピアノとエレキギターのソロがそれぞれ入ります。
後半ブルースのメロディに移行してからのピアノとギターの絡み合いがすごくいい。
それをしっかり支えるベースとドラム。このアルバムのバンドはキーボードもリズムセクションも相当の実力の持ち主に違いありません。

 

さて後半のライブ録音では、5曲のうちトラフィックのナンバーが2曲入っています。

「パーリー・クイーン(Pearly Queen)」

トラフィックの名曲中の名曲「Pearly Queen」の作詞作曲にデイヴ・メイソンは関与していないのでこれはカバー。
ジプシーの血を引くエキゾチックで神秘的な美女に出会ったという歌です。
煌めく衣装を主人公に売りつけたり、「見たこともないほどの大酒飲み」で、「時がくれば運命に出会えるだろう」などと語ったりする彼女はそこら辺のちょっと可愛い女性ではありません。
トラフィックのスティービー・ウィンウッドのスタジオ録音版はスローテンポで重く、主題のミステリアスな女の熱い魅力を表現しています。
デイヴ・メイソンのライブ・バージョンはアップテンポで、ウィンウッドの粘り着くような歌い方ではなく、なんとなく淡白な女王様です。
ただしオルガンがめちゃグルーヴしているのと、ギター・ソロがいい。ドラムもキレキレでカッコいいです。

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「ワールド・イン・チェンジズ(World in Changes)

米国のコメント欄を見ているとこの曲が一番好きと言っている人が多いのですが、このライブ版の主役はソロのオルガン。
相変わらずドラムもいいなと思います。難を言ってしまうと曲がドラマチックな割にデイヴ・メイソンの声に特徴がないのが物足りなかったりします。

フィーリング・オールライト(Feeling Alright)

デイヴ・メイソンが作詞作曲したトラフィックのヒット曲です。
きつね亭的にはこの曲が一番好きです。
トラフィックのバージョンとかなり違って、こちらはファンキーで、電子ピアノ、パーカッション、ドラム、ベースで取っているリズムが心地いい。
コンガらしい打楽器が張り切っています。メイソンの声もこの曲には違和感なくはまっています。

ということで

メイソンさん自身は気に入らなかったかもしれませんが、いい曲にあふれたアルバムです。

キーボード(ピアノとオルガン)が印象的な曲が多く、リズム・セクションものっています。ただしギタリストが主役のアルバムかというと要所要所のソロは別として「あ、ギターいたんだ」的な印象なんですね。

ちなみにアマゾン・ジャパンのコメント欄を見てみたらコメントゼロ。 何故?と思って値段をみたら、国内版4400円、国内中古で4280円、輸入中古で1500円。これは値段高すぎじゃありませんか、アマゾンさん。

 

 

 

中古CDで再会したトッド・ラングレンは真実(ほんまもん)のスターだった

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今晩は。ヴァーチャル・パブの倫敦きつね亭です。

先日のブログで、ヘイト・アシュベリーのミュージックストア「アメーバ」ががっかりだった記事を載せましたが、懲りない私は同じ「アメーバ・ミュージック」のバークレイ店に行って参りました。

カリフォルニア大学バークレイ校の近くにあるこちらの店舗はアシュベリー店とは打って変わって中古のCD・ビニール盤が多く、品数も豊富、お値段もアシュベリーの中古CDとは段違いに安く、店員のお兄さんも場所柄かこちらのほうがフレンドリーというおまけ付きで、常連になりそうな予感。

安いとなると普段買わないアルバムまで大人買いするのが意思の弱い人間の性(さが)というもので、取りあえず16枚をゲットいたしました。

 

そのうち1枚が、こちらトッド・ラングレンのCD『魔法使いは真実のスター(A Wizard, A True Star)』で何と3ドル99セント(約450円)。

大昔にビニール盤を持っていたものの、数回しか聞かず(良さがいまいち分からないまま)いつの間にか断捨離しておりました。
再度チャレンジすることにいたしましょう。

 

一応ネットで評価を見てみますと、えらく日本でも評価が高いではありませんか。
しかもプロのミュージシャンが高く評価している作品らしい。
ハードルが高!

 

さて取りあえず3周、ぶっ通しで聞いてみましょう。

本日のカクテルはその名もフラミンゴ・レディ。
ウォッカカンパリシャンパンの薄紅色の美しいお酒です。

フラミンゴとゼン・アーチャー(Flamingo/Zen Archer)

フラミンゴ」はひたすら美しい曲です。

昔好きだった曲で、やはり今聞いてみてもいい。

電子ピアノとオルガンが奏でる軽快なリズムとシンセサイザーが作る鳥の囀りと羽音が非現実的な楽園のような独特の世界を作っています。

この曲のベースも面白い。

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この楽園のような世界は、しかし次の曲「ゼン・アーチャー」でいとも簡単に覆されてしまいます。

アコーディオン(に聞こえるがオルガンかも)のイントロから始まる不思議なタンゴ調のこの曲は葬送曲のようで、愛らしく美しい鳥が射抜かれて死んでいく様子が語られます。
この曲のベースのフレーズもいいし、ドラムもシンバルの音が効果的。

悲惨な歌詞にもかかわらず、「黄色い月が昇り」「桃色の美しい鳥」「銀の矢で射抜かれる」「川に血が流れ」「目を閉じる鳥」と絵画的な情景はあくまでも美しい。
政治的なメッセージのようにも、あるいはもっと普遍的に美しいものの滅びに対する哀惜を語っているようにも聞こえます。

ファンが騙された時にはサンセット通りへ (When the shit hits the fan/Sunset Blvd)

これはめちゃノリのいい曲。つぶれた歌い方、硬派のギターワークで最初正統派ロックかと思ったら、軽快なキーボードのあたりから楽しさ炸裂。

電子ピアノのピコピコー、ピコピコーがたまりません。電子ピアノ、ピアノ、シンセサイザーが総動員で、地味に後ろでキンコンいっているのはグロッケンピールですね。
あらためて思うのですがこのアルバム40数年前に出したとは思えない。多分今の20代の人が聞いても十分楽しめるんじゃないかと推察します。

ちなみに「The shit hits the fan」は英語の慣用句で、文字通りウ◯チが扇風機の羽根(ファン)にぶつかって拡散されてしまったような大惨事のことで、ファンクラブのファンとは関係ないはず。昔のロックのあるある誤訳かなーとも思いますが、トッドさんはひょっとしてファンとファンを掛けてるのかな?

愛に飢えて (Hungry for Love)

ブギウギのピアノが心地いい。それを支える重厚なリズム・セクション。
ギターのソロもいいですね。
ELPの「ベニー・ザ・バウンサー」を連想させる部分もあります。

たったひとつの勝利 (Just One Victory)

ピアノの弾き語りから始まるドラマチックで美しい曲です。
自分を馬鹿だという奴も居るかもしれないけど、自分は自分を信じて選択をしてきたことを知っている。
他の人が何を言おうと、たとえ失敗しようと、もう一度頑張ってみようよ。
と「そんなに世の中簡単じゃないし」と言いたくなる臭い内容の詞なのですが、心洗われるメロディと力強いボーカルによって希望と勇気を与えてくれる曲になっています。

これは名曲です。ふとモータウン系のミュージシャンがカバーしても案外いけるかなと思ったりします。

ギターソロもいいし、多重録音のハモリングもいい。ドラムも切れのよさも。

きつね亭的にはこの曲のベースライン、もろツボです。

最後に

何と言うか、次から次へと天啓のように音楽が閃いていく人のようですね。
その意味でシド・バレットとの共通点を感じました。

ただしゼロからユニークなものをどんどんアウトプットしていくというより、ロックンロールやハードロック、ブギウギ、R&B, ブロードウェイのピーターパンにいたるまであらゆる音を取り込みながら、次から次へ独特の世界を展開しているという印象があります。多才で多彩でありながら器用貧乏になっていないところが凄い。

上にも書いたように40数年経っても全く古さを感じさせません。

 

一度目に通して聴いたときには、取っ掛かりどころがない、もうやめようかと思いましたが2度、3度聴いていくうちにどんどん好きになっていく、どの曲も本当にいいなーと思ってしまう。

第1聴で「うわ、これ凄い。めちゃ好き」と思った人って、かなり耳がいいんだなと尊敬できます。

私のように1度でやめようと思った方もあと2回ぐらい聴いてみて下さい。すーっと曲の世界に取り込まれて行くことでしょう。

 

 

もしイーグルスが好きならダン・フォーゲルバーグもぜひ聴いてほしい

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今晩は。ヴァーチャル・パブの倫敦きつね亭です。

 

ダン・フォーゲルバーグ、ご存じですか?

私は昔CSN&Y、イーグルス、ロギンス&メッシーナといったアメリカ西海岸の音楽を聴いていた当時このミュージシャンと出会い、以来『スーヴェニア(Souvenirs)』と『囚われの天使(Captured Angel)』はおそらく100回以上聴いていて、私の中ではIpodiPhoneに永代保存という感じで殿堂入りになっています。


この人はイリノイ州出身のシンガー・ソングライターなのですが、イーグルスなど西海岸のミュージシャンと交流があったため、カリフォルニア・サウンドを思わせる音作りになっているんですね。 後年にアルバムもヒット曲も出て、またベスト・アルバムも出ていますが、私的には初期のこの2枚が何度聴いても飽きない傑作です。

 

今回聴く『スーヴェニア(Souvenirs)』も発表の翌年1975年からイーグルスに参加したジョー・ウォルシュがプロデュースし、同じくイーグルスドン・ヘンリーグレン・フライが1曲ずつ参加しています。

その他西海岸のミュージックシーンには欠かせないドラマーのラス・カンケルが参加。なんとグラハム・ナッシュがハーモニカとバック・ボーカルで入っているのも一興です。

何と言ってもすごいのが、フォーゲルバーグ本人がヴォーカルのほかに、アコースティック・ギター、エレキ・ギター、オルガン、ピアノ、ヴィブラフォン、パーカッション、ムーグ・シンセサイザー、ツィターを弾きこなすという多才さを発揮しているところでしょう。

 

今日はナパの白ワインでいきましょう。

全11曲とも無駄な曲はありませんが、きつね亭の押しは以下の4曲です。

パート・オブ・ザ・プラン(Part of the Plan)

第一曲目にふさわしい明るくノリのいい曲です。

パーカッションーコンガとティンパレス(初めて聞いたけどウッドブロックつけてる?)ーのカンカン音もベースラインも心地いいし、ラス・カンケルのドラムもいい。
12弦エレキってこんな音出すのか、という発見も。
グラハム・ナッシュも入っているらしいハーモニーもきれいに決まっています。

歌詞は生きていくなかで色々つまずいたり、愛を受け入れる準備ができてなくて悩んだりしているけど、いつの日かこうした経験の意味が分かる日が来るだろう、探し求めていた答えが見つかる日がくるだろう、という内容で、作者本人が色々模索しながらも先に希望を感じているのが伝わって来ます。「若いという字は苦しい字に似てる」という昭和の歌謡曲がありましたが、後から振り返ると悩んだりしていた諸々もひっくるめて若さとは素晴らしいものです。

イリノイ(Illinois)

音楽の仕事のためにLAにやって来たフォーゲルバーグはカリフォルニアに馴染めなかったらしい。この曲は故郷イリノイに想いを馳せている望郷の歌です。

スチール・ギターとドラムの基調に途中から入るピアノとエレキギター、ちらりと入るヴィブラフォンが効いています。

3時間の時差と3000マイル彼方にある故郷の収穫と祝祭を想い、「南カリフォルニア、ここの太陽は冷たすぎる。丘陵の金(ゴールド)は荒らされてしまっている」と歌います。

最後に「Illinois, oh Illinois - I am your boy」という歌詞にいたっては、その気持ち分かる、切ないよね、と共感できるものがあります。

ちなみにウィキペディアによればイリノイ州議会は2015年に彼の生まれた8月13日をダン・フォーゲルバーグ・デイに制定する決議を行ったとのこと。

フォーゲルバーグは2007年に56歳で亡くなっていますが、故郷への愛に報いてくれたこの決議には草葉の陰で喜んでいるに違いありません。

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ザ・ロング・ウェイ(The Long Way)

若い恋人たちだった自分たちの過去を「長い長い道のり(long way)を歩いて来た、ただの間違った道(wrong way)だったのかもしれないけど」と振り返り、「もしこれからやり直すことがあるとしても、長い長い道のりをまた行かなければならないことだけは分かっている」という内容の歌詞。さよなら、少なくとも僕らはトライはしたよね、とどうにもならない状況を受け入れる境地です。

この詞の中で「彼女はとても若かったし、自分は負け人間だって勝つことができるとやっと分かりはじめたばかりだった」というすれ違いの表現が秀逸です。

ピアノだけの伴奏の弾き語りにドラムが入り、次いでストリングスとベースが入ります。

ストリングスを入れたためにドラマチックな効果は得た一方でややポップス的な色彩が濃く出ていますが、旋律の美しい名曲であると思います。

 

ゼア’ズ・ア・プレイス・イン・ザ・ワールド・フォア・ア・ギャンブラー(There's a Place in the World for a Gambler)

アルバム中最大の力作です。

アコギと単一のボーカルから始まり、ハーモニーとなり、ドラムス、ベース、ピアノが入りどんどん勢いが増していくという形式に沿った曲ですが、何と言ってもこのハモリの美しいこと。

中盤の間奏では牧歌的なスーザフォンの音色が隙間を埋めつつピアノと絶妙なコンビネーションを展開しています。ピアノのソロも冴えています。

歌詞は2番と3番が特にパワフルで、「女の心には歌がある。真実の愛だけが解き放つことができる歌が」という歌詞に対して「Set it free, oh set it free」というリフレイン、「あなたの深い心の暗闇の中にも光がある」という歌詞に対して「Let it shine, oh let it shine」というリフレインが入る。最後のLet it shineのコーラスになると祈りのような尊さすら感じます。

力強い生命力と解脱を感じさせるこの曲を最後にもってくることで、いいもの聴かせてもらいました、という気分でアルバムを聴き終えることができるのです。

終わりに

このアルバムには若さ故の苦悩と未来への希望が何度かテーマとして繰り返されています。

当時20代初めのダン・フォーゲルバーグだから書けた作品群と言えますが、時を経てこうしたグチャグチャが過去のものになった立場で聴いてみても陳腐さや気恥ずかしさを感じないのは、やはり楽曲としての魅力の賜物でしょう。

一人の女性を描いたスティーブン・スティルスの「青い目のジュディ」が彼個人の恋愛と切り離しても魅力的な曲として存在するように、ダン・フォーゲルバーグの青春の苦悩もその光も、普遍的な美しさを持つ曲の数々として存在しているように思います。

シンガー・ソングライターとしてのフォーゲルバーグの作詞作曲の才能もさることながら、魅力的なアルバムとしリリースされたのはジョー・ウォルシュのプロデューサーとしての力量といえるでしょう。

イーグルス、CSN&Yは好きだけど、ダン・フォーゲルバーグは聞いたことがないという方がもしおられたら、お勧めしたい一枚です。

 

 

イエスの1枚目『YES』は聴く価値があるか

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今晩は、ヴァーチャル・パブの倫敦きつね亭です。
めっきり寒くなってきましたね。

 

さて今日はイエスの『YES』を聴きたいと思います。

何か釣りのようなタイトルをつけてみましたが、ピンク・フロイドを1枚目からやったのでイエスも最初から聴いてみようという単純にそれだけの理由です。

今時イエスの一枚目を聞くかどうか真剣に迷っている人もまずいないでしょうから、釣りになっていませんが‥。

 

エスはメンバーの出入りも出戻りも多いバンドで、今誰と誰がいると聞いてもすぐ忘れるし、次のツアーの時には違うメンバーが入っていたりするので最近はもう何が何だか分かりません。

第一アンダーソンもスクワイアもいないバンドをイエスと呼んでいいのか正直微妙なものがあります。

この1枚目はジョン・アンダーソン(v)、クリス・スクワイア(b)、ビル・ブルーフォード(d)の他にトニー・ケイ(k)、ピーター・バンクス(g)が入っています。

このアルバムの雰囲気で今夜はカクテル・コスモポリタンを選んでみたいと思います。

 

ビヨンド・アンド・ビフォア(Beyond and Before)

ギター・ソロのイントロに続き、来ましたクリス・スクワイアのリッケンバッカーのゴリゴリのベース。
このゴリゴリ音のズシンズシンがないとイエスっていう気がしないですよね。
ジョン・アンダーソンの重複ハモリングのボーカルも美しい。
ジョン・アンダーソンという人は歌が上手いのかどうか正直分からないのですが、例えていうなら聖歌隊の人が風邪をこじらせて嗄れ声になってしまったというような声質。
この嗄れているのに透き通った不思議な声質がイエスの曲にフィットして耳に心地よいんですね。

アイ・シー・ユー(I See You)

ロジャー・マッギンとデヴィッド・クロスビーが作ったバーズの曲のカバーです。

『こわれもの』に入っているサイモンとガーファンクルの「アメリカ」のカバーに当時はへえと思いましたが、もともとイエスはかなりカバーを手がけているしい。
このアルバムでも「エヴリ・リトル・シング」が入っているし、「エリナー・リグビー」もYoutubeにアップされています。

この曲、バーズの曲の中でもかなりジャズがかっている方ですが、イエスのバージョンはさらにジャズ色が強い作品になっています。
この曲のビル・ブルーフォードのドラムは必聴。ベースももちろん、びんびんにグルーヴしています。
ギターはインプロビゼーションのソロ・パート以外のほうがむしろジャズ・ギターらしく冴えている。

初期のバーズはディランの曲のカバーを多くやっていて、実は本家のディランよりもバーズのバージョンが好きなのですが、この曲に関しては本家のバーズよりもイエス・バージョンのほうが好きです。

ルッキング・アラウンド(Looking Around)

けたたましいキーボードではじまるこの曲は、旋律的にはのちのイエスに近いように思います。
リズム・セクションの重厚感もボーカルのハモりにも『危機』『こわれもの』に通じるものがあるものの、比べてしまうと曲全体にどこか粗さがあるのが否めません。

 

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一番上の赤と青のロゴはUK版のジャケット。US版の表紙はこれです。ジョン・アンダーソン以外のメンバーがかなり可哀想。

ハロルド・ランド(Harold Land)

シャッフルのリズムとオルガンから楽しく始まる曲ですが、ボーカルが入る辺りから俄然シリアスな曲調になります。

ハロルド・ランドは兵隊として戦地に赴きます。請求書の支払いを済ませ、牛乳配達も止めてもらって、帽子をかぶって、じゃ行ってくるから、と最初は呑気なものですが、
寒さと雨と泥の中を行進し、戦って地獄を見ます。戻って来たハロルドは、恋人も若さも失い、胸に勲章を下げていますが、たった2年の間に遥かに老け込んでしまっています。

エスにしては珍しい叙事詩です。雨の中の行進の場面の重厚なリズム・セクションが泥を跳ねながら進む軍歌の重々しい響きを思わせます。
ボーカルも美しいが、ボーカルと一緒に入ってくるピアノが美しい。

エヴリ・リトル・シング(Every Little Thing

ずいぶんと大胆にアレンジにしたものです。冒頭の部分などもはや別の曲の感があります。

ジョン・アンダーソンの多重ハモリングがいいですね。とくに"Can't stop thinking about her now” "Yes, I know that she loves me now" で語尾が上がっていく部分の声が美しい。

バンクスのギターのキレもいい。

ビートルズのカバーしているミュージシャンは膨大な数のようですが、この曲のイエス・バージョンかなり好きです。

 

とくに印象に残った上記以外にもアコギとピアノにブルーフォードのビブラフォンが効果的な「昨日と今日」、メロディが美しくキーボードと柔らかいベースが心地いい「スウィートネス」など他にも聴きどころは少なくありません。

まとめ

まずプログレ・バンドとしてのイエスを期待する方はがっかりするかもしれません。

サイケデリック・ロックとかアート・ロックというよく使われる呼称は今ひとつぴんと来ませんが、ジャズを中心に色々なものを取り入れて試行している印象があります。

面白いか面白くないか、でいえば私的にはかなり面白いアルバムだと思います。

バーズやビートルズをイエス流にどう料理しているかを聞いてみるだけでも面白い。

 

エスというバンドの特徴のひとつは「耳に心地よいプログレ」ではないでしょうか。

サードアルバム、こわれもの、危機と進んでいくにつれどんどん曲が洗練されていくけど、一貫して心地よさという特徴がある。

上に述べたようにジョン・アンダーソンの声質そのものが寄与している部分はあるのですが、バンド自体の音が心地よいのです。

このアルバムも例外ではありません。

ただ、その心地よさが『危機』あたりに来ると絹の手触りにも似てくるのですが、このアルバムでは目の粗い布のようなというか、そんな印象です。

 

添付は当時の画像。 


Yes - No Opportunity / Looking Around / Survival - Live Beat-Club 1969 (Remastered)

ギルモアが入ってシドが去ったピンク・フロイド『神秘』の聴きどころ

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今晩は。ヴァーチャルパブ倫敦きつね亭です。

本日の名盤は、ピンク・フロイドの2枚目『神秘(A Sauerful of Secrets)』。
デヴィッド・ギルモアが参加しシド・バレットが抜けた初期のピンク・フロイドどのような変貌を遂げたかを見て参りましょう。

ピンク・フロイドのレーベル会社は73年『狂気』の成功に乗じて、初期の2枚『夜明けの口笛吹き』『神秘』をカップリングした2枚組のアルバム『ナイス・ペア』を出します。
きつね亭はこの『ナイス・ペア』のLPを聞いていましたので、1枚目と2枚目が同じ路線のアルバムだったような印象が記憶に残っていました。

今回あらためて『神秘』を聞いてみると、自分の印象がだいぶ間違っていたことに気づきました。

 

では『神秘』の聴き所を見ていきましょう。
今日のお供はアルバムに登場する夢見る「クレイグ伍長」さんにちなんでジン・トニックにいたしましょう。

「光を求めて」(Let there be more light)

このアルバムのハイライトは「光を求めて」「太陽讃歌」、「神秘」の3曲です。

堅いベースのソロ、ドラムのシンバルの音、さらに中東か東洋を思わせるオルガンのメロディーで第一曲目の「光を求めて」が始まります。

囁くようなロジャー・ウォーターズとリック・ライトのボーカルが「遠く遠く彼方で」「人々は彼のことばを聞く」「その日が訪れる」「何か方策を講じる」と平坦なリズムを繰り返すのを受けて、

オルガン・ファズの爆音とともに「ついに偉大な船が炎の輝きを放ち人類に接触するべく舞い降りる」とギルモアのボーカルが入ります。

ここで視聴者はその後ウォーターズらとともにピンク・フロイドの顔となっていくデイヴ・ギルモアの第一声を聞くことになります。

「わあ、ついに来た。恐怖の大王」とノストラダムスの大予言(古い!)的な驚愕シーンなのですが、声がまだ若くて薄いので力強く歌っているわりに今ひとつインパクトに欠けます。

この大王様、地上任務に就く兵士の目に映るのは「ルーシー・イン・ザ・スカイ」なんですね。ビートルズの曲をもじっているところにフロイドの遊び心が伺えます。

この曲は後半にギルモアのギター・ソロが聞かれます。滑らかなギターは、あピンク・フロイドなんだなと妙な感触です。

「太陽讃歌」(Set the Controls for the Heart of the Sun)

この曲はシド・バレットを含むピンク・フロイドの5人全員が参加しています。

発表当時の批評は「退屈で平坦」と散々だったようですが、どうしてどうして、当時の人は耳がどこについていたのか?と言いたくなる位おもしろい曲です。

力強いゴング、ティンパニのバチで叩いているドラムに、ヴィブラフォンの透明な音色、セレスタのキラキラ音が色彩を添えています。

ぶつぶつ呟くウォーターズのボーカルはお経のようで、晩唐の詩人である李商隠の詩をベースにしたという詞によく合って崇高な印象を醸し出しています。

光を求めて」のリック・ライトとウォータ―ズの囁き、この曲の呟きボーカル、のちの「エコーズ」のギルモアの平坦な繰り返しボーカルも、ピンク・フロイドの定番になっていてで何だかすごく落ち着きます。

途中から海鳥の声が効果的に入っており、シンセサイザーが楽器リストにないのでオルガンかな?と思ってWikipediaを見たところシド・バレットのギターとのこと。
うーん、すばらしい。

この曲は「ウマグマ」のライブがいいと聞いているので期待大です。バレットのギターが聞けないのは寂しいですが。

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神秘 (A Saucerful of Secrets)

この曲を初めて聞いたときに思い浮かんだのはダンテの「神曲」です。

延々と地獄巡りがあって、最後は天界にあがっていって教会のオルガンと賛美歌で魂の癒しがある、というような。

聴き直すにあたってWikipediaを見てみたら、戦争の悲惨と戦後の鎮魂を表している、というウォーターズの説明がありました。
あたらずとも言えども、そう遠くなかったという気が‥。

組曲形式になっていて、第1楽章から第3楽章まではファルフィッサ・オルガン、スライド・ギター、ギターのディストーション・ペダル効果を駆使した不安な旋律が延々と奏でられます。

実際に戦争を表す第2楽章からはドラムのシンコペーションが不穏な空気を盛り上げていく。

第3楽章のオルガンにいたっては深淵から聞こえてくるようで、浮かばれない霊の恨み・苦しみを聞かされているように思えてきます。
ひらたくいってしまうとお化け屋敷かホラー映画の効果音に近い。

最後の3分間では、オルガンの音色が教会のオルガンの音色に転じて、魂を浄化するようなメロディーを弾き、霊達もようやく天国に受け入れられたようです。

上から目線で大変申し訳ないのですがこの「神秘」を聴いて、「あ、これはひとつ脱けたな」と思いました。

ひとつのドアが開かれた、そんな印象です。これはバレットのフロイドから、新生フロイドへの通過門だったのではないでしょうか。

 

下は「神秘」のポンペイ・ライブの動画


PINK FLOYD - A SAUCERFUL OF SECRETS - LIVE AT POMPEII

シド・バレットの存在と不在

このアルバムでは、シド・バレットは「太陽讃歌」に参加している以外に自作の「ジャグバンド・ブルース」のボーカルとギターを演じています。

不思議な曲で、シドは「私のことを考えてくれてご親切に。私がここに存在しないということを明確にしてくれて大変にありがとう」と皮肉にしかとれない口調で歌っています。

この曲を他のバンド・メンバーが一緒に演じて、このアルバムに入れたのが一種のミステリーです。

このアルバムには「シーソー」と「追想」(ともにリック・ライト作)というノスタルジーをテーマにした曲が入っています。

前作の「マルチダ・マザー」に通づるものがあり、シド・バレットが作詞・作曲したと聞いても信じてしまうかもしれない。

しかしギターはもちろん、曲のアレンジが『夜明けの口笛吹き』と大きく乖離しており、やはりシドはもうピンク・フロイドの一部ではないのだ、とあらためて認識することになります。

終わりに

カリスマ的な中心人物を失った組織がどのように生き延びてきたのかというのはおもしろいテーマです。

そうしたバンド(あるいは企業)の多くが当時の生彩を欠いた形で存続する中で、ピンク・フロイドはかえって昇華し次のステージに進んでしまっている。

そこにオリジナル・メンバー3名およびギルモアの並々ならぬ才能と創造性を感じるのです。

さて、このアルバムが発表された1968年に出たシングルでベスト・アルバムにしか収録されていない曲があります。
日本でもヒットした良い曲です。
夢に消えるジュリア(Julia Dream」-下記の動画でご覧下さい。


Pink Floyd - Julia Dream [Original, High Quality Stereo Sound, Subtitled]

 

 

 

ジェフ・ベックと超スーパー・メンバーたちの『トゥルース』

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今晩は。ヴァーチャルパブ倫敦きつね亭です。
スコッチのオン・ザ・ロックですか?すぐにお作りしましょう。

 

さて、ジェフ・ベックを聴いたことがない方に、もし1枚だけアルバムをお勧めするという状況になったら、私ならこの『Truth(トゥルース)』が一押しです。『ラフ・アンド・レディ』も『ベック・オラ』も捨てがたいものがありますが、まずは『トゥルース』かな、と。

もっともベック本人に聞いたら確実に『ブロウ・バイ・ブロウ』、『ワイヤード』以降のほうを好んでいるでしょう。

でも初期のブルースにどっぷりのジェフ・ベック、いいんですよね。

まずはアルバムの豪華絢爛なメンバーをご覧ください。
ジェフ・ベック(g)のほかにロッド・スチュアート(v)、ロン・ウッド(b)、ニッキー・ホプキンズ(p)、ジョン・ポール・ジョーンズ(b、org)、ジミー・ペイジ(g)、キース・ムーン(d)。

当時一般に名が’知られていたのはベックのほかは同じくヤードバーズにいたジミー・ペイジザ・フーキース・ムーンぐらいでしょうか。

ロッドとロンはこの後ベックとの確執の末、スモール・フェイセスのメンバーと合流してフェイセズへ。ひとりはポップ界のスーパー・スター、もう片方はストーンズのギタリストに。

レッド・ツェッペリンはこのアルバム発表と同年にデビューを果たし、ピアニストのニッキーはセッション・ミュージシャンとしてその地位を確立します。

 ではこのアルバムの聴き所をみて行きましょう。
あ、細かい説明がうざったいと思ったら「まとめ」とおまけの動画だけ見てってね。


モーニング・デュー(Morning Dew)

最初の2曲もギターとボーカルの掛け合いが楽しくロン・ウッドのベースも冴えていますが、前半の聞きどころは3曲目の「モーニング・デュー」じゃないでしょうか。

これは多くのアーティストがカバー・バージョンを出している曲で、核戦争だかの後に残った人間の歌らしく寂寥感の漂う歌です。

ベック版では、バグ・パイプのイントロの後にロッドのボーカル、次いでワウ・ファズを聞かせたギターが絡んできます。語っているような嘆いているようなギターの旋律が美しい。ベース・ラインも後半に入ってくるピアノも秀逸です。 

ユー・シュック・ミー(You Shook Me)

しょっぱなからニッキーのピアノ。主張は強いけど曲にはまっていて邪魔ではありません。中盤にはばっちりギターの聞かせどころが。ジョンジーのオルガンも控えめながら効いています。

ごてごてのブルースですが、ロッドの声質は不思議に合っています。

この曲、マディ・ウォターズがオリジナル版ですが、ツェッペリンも1枚目に入れていますね。 が、批判承知で言ってしまうと、ロバート・プラントの声質には絶望的に合っていない気がしました。

グリーン・スリーブス(Green Sleeves)

前半と後半の箸休めのような感じでアコギのグリーン・スリーブスが入っています。

私がジェフ・ベックの曲をはじめて聞いたのは中学の頃に深夜放送で聞いたグリーン・スリーブスでした。今考えると数あるベックの曲の中でなぜグリーン・スリーブスが初めての邂逅、という感じですが今でも好きなナンバーです。

ごてごてブルースのアルバムの中で澄んだ音色のアコギが清涼剤となっています。

 

さて後半は聴きどころ満載です。

ロック・マイ・プリムソウル(Rock my Plimsoul)


何ともリズムが心地よいごてごてのブルースです。
この手の歌を歌わせたらピカイチなのはポール・ロジャーズですが‥‥
いえロッドの歌も十分曲に合っています。ベックのギターはめちゃめちゃ歌いまくってます。いつまでもこのリズムに揺られていたい曲です。

ベックス・ボレロBeck's Bolero)

作曲のクレジットがジミー・ペイジになっていますが、ベック自身は自分がかなりの部分書いたと言っています。
この曲のベースはJPJ, ドラムはキース・ムーン。初めはザ・フージョン・エントウィッスルが参加する予定だったのに、結局来なかったため急遽ジョンジーになったとか。
ラヴェルの「ボレロ」からヒントを受けたとのことで、最初の部分ではラヴェルのタッタタタ・タッタというリズムの繰り返しがジミー・ペイジの12弦ギターで行われます。そこにベックのギターが入り、ベース、ドラム、ピアノが入るという構成です。ベックのギターの伸びがとても美しい。

ブルース・デラックス(Blues Deluxe)

このアルバム中唯一のライブ録音です。

ロッド・スチュアートは根っからのショー・マンでスタジオ録音より生き生きとしていているように聞こえます。歌詞に合わせて、自虐的な「ハッハッハ」という笑いが入っていたり。

この曲のニッキー・ホプキンズのピアノがすさまじくいい。ブログなら赤スター3つ位とはてブつけるレベルです。超高音の叩き付けるような演奏のところは正直何の音を弾いているのか分からないですが。

大丈夫か、ニッキーに主役食われちゃわないか、と思ったけど大丈夫、後半ブルースギター・ソロの技の見せどころがちゃんとあります。

迷信嫌い(I Ain't Superstitious)

この曲のギターはとても面白い。ワウファズが効いていて「黒猫が目の前を横切り(Black cat crossed my trail)」の歌詞に合わせたようなネコのミャウ・ミャウ声が出ています。

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ニャんの用かにゃ


ちょっと残念

前半のOl' Man River という曲は、ゆったり流れるミシシッピ河と近くの綿花プランテーションで働く黒人の苦しみを対比させたよい曲です。
ベック自身がベースを担当し、中盤のロッドのボーカルとベックのギターの掛け合いもいい。ジョン・ポールのオルガンも崇高な印象です。
が、いかんせんキース・ムーンティンパニの音が大きい。ミキシングのせいだと思いますが、太鼓の音ばかりが耳に残ってしまいました。

まとめ

将来大スターになる個性豊かなミュージシャンが集まっているせいもあり、それぞれの音にエッジが効きすぎて、取留めのないという印象をもつ方もおられるかもしれません。
されど、そこが生々しいというか、洗練とは違った意味での面白さ、楽しさがあり、これから花開いていく彼らのエネルギーを感じる一枚です。

面白いのは2009年のベックのステージにロッド・スチュアートが飛び入りで出演し、「You Shook Me」を歌いはじめたYouTubeの画像です。長い年月を経て確執が風化したのでしょうか?

もうひとつ2007年の動画で、ベックがTal Wilkenfeld という若いオーストラリア人女性のベーシストとコンサートをやっているのがありました。
可愛らしく細腕なのになかなか凄いベーシストです。ベック様もえらく楽しそう。

下の動画、一見の価値あります。 


Best FEMALE Bass player in the world! Tal Wilkenfeld Jamming with JEFF BECK

60年代ヒッピーの聖地ヘイト・アシュベリーでCDを探すの巻

ギルガメッシュ』の回にもちょっと触れましたが、カンタベリー系ロックの好きな友人から20枚ほどの入門編お勧め盤を推薦してもらいました。

どうせならアマゾンではなく、実際に見て買う方が楽しいと思い、サンフランシスコ界隈で一番大きなCDショップがあると思われるヘイト・アシュベリーにやって参りました。

 

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歴史的にサンフランシスコは全米の中でも特にリベラルな土地柄で、とくにヘイト・アシュベリー(HaightとAshburyの通りが交わる一帯)は60年代のヒッピー文化、カウンター・カルチャーの中心として全国から政治思想(反ベトナム戦争・反体制)、芸術的表現の自由を求める人たちが集まっていた場所なんですね。

 

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その時代のキーワードはドラッグ(とくにLSD)、フリーセックスであり、ロック、フラワー・チルドレン(ヒッピー)、さらにヨガなどの東洋思想であった訳です。

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ロックはとくに重要な要素で、ジェリー・ガルシアの家もこの近くにあり、グレイトフル・デッド、ジェファーソン・エアプレインはもちろん、テキサス出身のジャニス・ジョプリンもこのヘイト・アシュベリーで花開きます。

とくに今から半世紀前の1967年の夏は、全米から若い層を中心に10万人の人々が集まった「サマー・オブ・ラブ」とよばれるカウンターカルチャーの一大イベントが開かれました。


たしかスティーブ・ジョブズが「サマー・オブ・ラブに行きたい」と養父母に訴えたような話が伝記に載っていたように記憶します。1955年生まれのジョブズはまだ12歳だったはずで実際に行ったかどうかの記述は記憶が定かではありません。ともあれサンフランシスコのベイ・エリアで育ったジョブズがこの時代の空気を吸ってその影響を受けていたのは当然のことだったのでしょう。

 

きつね亭が初めてヘイト・アシュベリーに行ったのは今から20年位前ですが、その時は今よりも閑散としていて、数少ないコーヒー・ショップでコーヒーを買って通りを隔てた公園で大木の根っこに腰掛けてコーヒーを飲みながらくつろいでいた記憶があります。


今では店も増え、1960年代のカウンター・カルチャーを目玉にした観光地のようになっています。

当時を反映した本を多く仕入れている本屋、衣料品屋、古着屋、アンティークショップ、ノベルティ・ショップ、ネパールのグッズ・ショップ、オーガニックのレストラン等々。

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ここが中心部。 ヘイト・アシュベリーはSmoke Shopが多いです。
カリフォルニア州は昨年の選挙でマリファナのリクリエーション利用(つまり薬用ではなく遊びで楽しむ用)が合法になりました。日本から来た方はくれぐれも間違えて帰国の荷物に入れたりしないでね。

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60年代お約束の絞り染め風Tシャツ

とはいえ大勢の観光客が押し掛けるわけでもなく近く住む若い子たちがオープンカフェで友達としゃべっていたり本を読んだり、といった感じでのんびりしています。
時には頭に花を飾った元フラワー・チルドレンの爺様・婆様も見うけられますが。

 

CD探しの前にまずはお昼ご飯。

バーガーにドンと突き刺さったナイフがワイルド。

 

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そして、ここが目指すアメーバ・ミュージックです。

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とても広いのでかなり期待が持てそうです‥。

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が、キャラバン。ガーン。0枚です。

 

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ゴングも、ガーン。0枚です。

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当然、キャメル、ナショナル・ヘルス、ヘンリー・カウなどは間仕切りすらございません。

かなりこのお店は偏っております。
ご当地のデッドやジェファーソン・エアプレイン、スターシップ系が豊富にあるのは当然ながら、なぜかシド・バレットなどソロも特別企画ものも全種類そろっているという状況で。

 

この日の戦利品は、ギルガメッシュ(日本版)の他、ソフトマシーンの2枚目、ハットフィールドの『Rotter's Club』、ケビン・エアーズの『Joy of a Toy』、カンタベリーではありませんがピンク・フロイド『More』(アメリカではすでに廃盤で輸入品)、ジャケットが汚くて安くなっていたフェイセスの『ウーララ』でした。

 

教訓:
ヘイト・アシュベリーではCDを探すべからず。
CDはアマゾンで買うべし。
あるいはMP3をダウンロードするべし。(味気ないですが)
東京にいる方はDisc Unionを活用が一番です。
友達がCDを持っている場合は焼いてもらうべし。
その場合はジャケットのカラー写真も頼むがよろし。

 

あーあ、巷にタワー・レコードやヴァージンの店舗があった時代が懐かしいです。