ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックを聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く(時々乱読)

ピンク・フロイド『ウマグマ』のライブ録音は一押し

f:id:londonvixen:20181106141405j:plain

 

『夜明けのパイパー』『神秘』『モア』とのろのろと歩を進めてきましたピンク・フロイド関連。

この記事進行のタラタラぶりでは『狂気』ザ・ウォールははおろか原子心母』に達する以前にブログに飽きて放り出してしまう恐れもありますので、今回はウマグマ』で行ってみたいと思います。

ご承知の方も多いと思いますが、2枚組の『ウマグマ』は1枚目がライブ、2枚めがスタジオ録音という構成になっています。 

ライブ盤は全4曲。

『夜明けのパイパー』に収録された「天の支配、シングルとして発表された「ユージン斧に気をつけろ(Careful with that Axe, Eugene)」『神秘』から「太陽讃歌」「神秘」

 

londonvixen.hateblo.jp

 

ちなみに『ウマグマ(Ummagumma)』という奇妙キテレツなタイトルですが、性的隠喩を含むスラングという説、SF小説デューン』に出てくる呪文ウマーが語源、という諸説があるようですが、ニック・メイソンの「特に深い意味はない。響きがカッコ良かっただけ」という身も蓋もないコメントが一番ピンク・フロイドっぽい。

天の支配(Astronomy Domine)

スタジオ録音の方は比較的淡々としていますが、こちらのライヴ・バージョンは迫力があります。
ロジャー・ウォーターズのうねるベースのかっこよさ。
デイヴ・ギルモアのファズのかかったギター・ソロ。
シド・バレットに代わってヴォーカルはウォーターズギルモアのユニゾン
ニック・メイソンのドラムもシンバル使いもかなり好き。
リック・ライトのオルガンの音色の美しさ。
やはりピンク・フロイド好きだ、と改めて感じます。

 


Astronomy Domine - 01 - Ummagumma - Pink Floyd

 

ユージン斧に気をつけろ(Careful with that Axe, Eugene)

個人的にはこのライヴ録音で一番好きな曲です。

ベースのリズムの繰り返しにオルガンの不穏なメロディーが入っていくイントロ。
「あれ、『モア』に似た曲はなかった?」という気がしますが、この時期のピンク・フロイドの特徴的な曲調と言えます。

この曲では有名なウォーターズ「叫び」が聞かれます。

プライマル・スクリーム(退行療法で行われる大声で叫ぶ手法でかのスティーヴ・ジョブズも青年期に試したらしい)らしいとされていますが、もっと原始的な太古の人類の絶叫のように聞こえます。

そのあとのスキャットー歌うベーシストは結構いますがベース弾きながら歌うのはかなり難しいです。

終盤のギルモアのギターとライトのオルガンの絡みも絶妙。

 

 


Careful with That Axe, Eugene - 02 - Ummagumma - Pink Floyd


太陽讃歌(Set the Controls for the Heart of the Sun)

和太鼓を思わせるドラムのバチ打ちとドラの力強さ。
パーカッションをバックに例によって呟くようなヴォーカル。

晩唐の詩人の詩をベースにした詞を意識してかパーカッションとキーボードがオリエンタル趣味を覗かせます。

後半のインスト部分のシンセサイザーにはぞくっとさせられます。

スタジオ録音と比べて残念なのはスタジオ盤で入っていたシドのギターによる海鳥の鳴き声がないことでしょうか。


Set the Controls for the Heart of the Sun - 03 - Ummagumma - Pink Floyd

 

神秘 (Saucerful of Secrets)

うねるベースと不穏なメロディを奏でるキーボード。

この時期のピンク・フロイドこの組み合わせが多いような気がしますが、これ結構好きです。

中盤のドラム・ソロに入ってくるキーボードのヒュルヒュル、キュルキュル音の禍々しさ。
ひとしきり魔と闇に支配されたような混沌を抜けた後に、全てを包み込んで天に昇っていくような崇高なオルガンとスキャットの美しい調べには思わず手を合わせたくなります。


Pink Floyd - A Saucerful Of Secrets (Ummagumma)


終わりに

スタジオ録音を忠実に再現したライヴを誉めるコメントを聞いたことがあります。
しかし優れたライヴにはそれを遥かに凌駕するエネルギーを感じさせるということをこのアルバムが実証しています。
ピンク・フロイドのこのライヴをじかに聞けた人たちは本当にラッキーです。
ウォーターズとギルモアはフロントマンですが、ニック・メイソンのドラムもリック・ライトのキーボードも素晴らしい。
収録の4曲は比較的に似通っているのですが、何度繰り返し聞いても飽きるということがありません。

 

見開きの紙ジャケで小冊子付きというのが何となく得した感じ。

 

f:id:londonvixen:20181106141831j:plain

 

590ページに及ぶ分厚い「ピンク・フロイドの全曲とその背景(Pink Floyd All the Songs -The Story Behind Every Track)」という本をゲット。ピンク・フロイドの攻略本です。

f:id:londonvixen:20181106141920j:plain