ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックを聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く(時々乱読)

ノリノリのブギーはステイタス・クォーの『クォー』

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先週はホラー小説のレビューをアップしたところ、閲覧数がいつもの5倍ぐらいに跳ね上がっていて我ながらびっくりしました。

洋楽と並行して英国ホラーのブログをやろうかと一瞬考えましたが、そんな時間があるはずもなくそちらは老後のお楽しみにとっておこうか、と(笑)。

 

さて今回はステイタス・クォーの7枚目のアルバム『クォー(Quo)』(1974)です。
『ブギに憑かれたロックン・ローラー』という何やらケッタイな邦題が付いています。

 

ステイタス・クォーStatus Quo)はロンドンのフォレストヒルズ出身のバンドで、かなりメンバーの変遷を経てきていますが、このアルバムではオリジナル・メンバーのフランシス・ロッシ(g、v)アラン・ランカスター(b、v)および初期からのメンバーであるリック・パーフィット(g、v)ジョン・コフラン(d)が参加。他にボブ・ヤングがハーモニカ、トム・パーカーがキーボードで参加しています。

ほとんど全曲がノリノリのブギやロックンロールですが、お勧めの曲は以下の通りです。

バックウォーター(Backwater)

独特のギター・リフのイントロにずっしりしたベースが入って2台のギターとベースのユニゾン

ロディアスなパートからリズムが加速して正統派のロックンロールへ。

泥臭くどこか懐かしさを感じる曲です。

ハイウェイをふらふら歩いていたら女が家に入れてくれた。
当然「自分」は色々期待しているわけですが疲れと寒さで熱を出して寝込んでしまう。
医者が来て熱が下がった頃には女はどこかに消えてしまった、という冴えない歌詞です。

 


Status quo-Backwater

 

このバンド、CDだけ聴くよりも動きのあるステージに魅力のあるバンドです。

横にずらっと並んで3人が同じ手の動きで同じフレーズを弾いていたり、一つのマイクの周りに猫背になっていて集まっていたりするのに独特の趣があったり。

ただ残念なことにアップされているステージ動画はそれほど多くありません。


ブレイク・ザ・ルール (Break the Rule)

シングル・カットされて全英チャートの8位になった曲です。

シャッフルのノリのいい楽しい曲。

ホンキートンク・バーで知り合った娼婦のような女の家に連れて行かれ、翌朝目が覚めたら財布が空になっていた、という間抜けな男の話ですが、「誰だって時には羽目を外した方がいい」と笑い飛ばす陽気さがあります。

中盤のロッシのギター・ソロ、ホンキートンク・ピアノが入って来て、ハーモニカもいい感じです。

 


Status Quo-Break The Rules HQ


ロンリー・マン(Lonely Man)

アコギのイントロで始まるブリティッシュ・フォーク調の曲。

アルバム中唯一のメローな曲です。

ソフトなヴォーカルが美しく、後半に入るギターのソロ、ベースのフレーズも美しい。

 

浜辺で一人たたずむ孤独な人に語りかけ、何を探しているのか、友人が必要ではないのか、自分ではだめなのか、と問いかけています。

 


Status Quo - Lonely Man


スロー・トレイン(Slow Train)

一曲の中に色々な要素が盛り込まれていて楽しめる曲です。

初めはアップビートのシャッフル。ここのギターの掛け合いが楽しい。

それから途中メロディアスな数小節が入りロックンロールへ。

ベースの動き、さらにロックンロール部分のベースの高音部も好きです。

後半にはアイルランドのリヴァーダンスを思わせるケルト民謡のようなパートが入る。
さらにドラムソロを経て再びアップビートのシャッフルへ。

家にいてウンザリしている若者が陽のあたる場所を目指して出て行く。
古いダコタ飛行機(ダグラス社のプロペラ機)に乗るお金もないので家畜用の遅い貨物車に乗って。
母さん、俺が出て行ってもオタオタしないでくれ。ここにいるより俺にとってはずっといいから、と母親に語りかけています。

 


Status Quo-Slow Train HQ

 

終わりに、そしておまけ

中学時代にステイタス・クォーというラテン語由来の「現状」という語を知っていたのは、このバンドのおかげです。

今聞いてみると、英国のバンドというよりアメリカの、それも南部の泥臭い風合があるような気がします。アメリカのAmazon.comを見ていたら全く同じことをコメントに書いていた人がいて、やはり同じ印象を持つ人はいるものだと納得しました。

それでもブリティッシュ・フォーク調のLonely Man、スロートレインのケルティックなパートなどはやはりアメリカのバンドとは一味違いますね。

それにしてもこのジャケット、木からメンバーの顔が生えていてなかなかグロです。
ベースのランカスターなどは打ち首になった罪人のような表情です。

木になった頭といえばセンチメンタル・シティロマンスのこのジャケも構図はえらく似ていますが、こちらの方がだいぶ明るいですね。

 

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