ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックを聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く(時々乱読)

さようならピーター・フランプトン。とりあえず「ハンブル・パイ」を聴く

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たまたまコンサートのお知らせを見ていたら、10月にピーター・フランプトンのファイナル・ツアー」が北カリフォルニアに来る、とありました。

場所は私の居住地から電車で2時間もかかるコンコルドという街です。

普段ならそんな遠くのコンサートは億劫で行きません。

しかもその翌週にはすでに切符を買っているティーヴ・ハケットのコンサートがあります。

かなり迷った末に、最後ならやっぱり見送ろうとかなりいい切符を買いました。
(出費が結構痛い)

ウィキペディアによると封入体筋炎という筋肉が萎縮し筋力が衰える病気で本当に今年が最後のツアーらしい。まだ68歳。もったいないです。

 

とはいえ、私はピーター・フランプトンというミュージシャンにこれまで殆どご縁がありませんでした。

ソロ・アルバムも持っていないし、参加しているアルバムで持っているのはハンブル・パイHumble Pie1枚のみ。

まだ10月まで時間があるのでおいおい予習を進めるとして、まずは手持ちのHumble Pieを聴いて見ます。

Humble Pie」はハンブル・パイの3枚目のアルバムで1970年のリリース。

邦題は「大地と海の歌

ジャケットにビアズリーの「サロメ」が使われているため、ビアズリー・アルバム」という通称でも呼ばれます。

参加メンバーは、元スモール・フェイセズティーヴ・マリオット(v、g、kb)、元スプーキー・トゥースのベーシストのグレッグ・リドリー、ドラムのジェリー・シャーリー、そしてピーター・フランプトン(g、v、kb)。

リヴ・ウィズ・ミー(Live with Me)

自分の感情をかき回す恋人にお願いだから一緒にいてくれ、と懇願する歌。

オルガンのイントロとドラム・ロールに続くスローでヘヴィーなブルース・ロック。

ちょっとバドカンの「Ready for Love」を思わせます。

マリオットの絞り出すようなヴォーカルがこの曲によく合っています。

2台のキーボードの絡みに続くギター・ソロ。さらに後半のオルガン・ソロ、いいです。
グルーヴィなベースもいい感じです。

 

2曲目の「Only a Roach」は可愛い感じのカントリー・ソング。
ドラムのジェリーの作で、彼のヴォーカルが聞かれます。

 

3曲めの「One Eyed Trouser Snake Rumba(ワン・アイド・トラウザー・スネーク・ルンバ)」

際どい隠語の題名ですが、内容はよくある求愛の詞。

かっこいいギター・リフに導かれ始まるずっしり重たいシャッフルのビート。

ギター、ドラム、ベースが一体となって繰り出してくるブギの快感。

ギターのソロもいいけど、ベースのノリも最高の曲です。


「Earth and Water Song (大地と海の歌)

日本版のアルバム・タイトルにもなっているこの曲はピーター・フランプトンの作。

アコギとベースで始まる優しい曲。

ゴテゴテにヘヴィーな前後の曲に挟まれて、フルコースディナーのシャーベットというか、峻険な山道で出会う小川のせせらぎというか。

確かにきれいな曲で、ギター・ソロも後半に入ってくるピアノもいいのだけど、初めに聞いた時は、果たして名曲なんだろうかと正直はてなマーク」が浮かびました。

が、何回か聴くうちにどんどん歌の情景が脳裏に広がってくるのです。

陽光の眩い昼の空、星が降る夜空。

その下でどっしりと大地のように彼女を受け止める男と、打ち寄せる波のように大地に身をまかせる女。

いい意味でケニー・ロギンスの曲に通じるような穏やかな幸せを感じさせてくれる曲です。

 


Humble Pie " Earth And Water Song "


続く「I'm Redy(アイム・レディ)」ウィリー・ディクソンの作で、マディー・ウォーターズが最初にレコーディングをしたという曲。

ブルース・ナンバーですが、これぞ王道のブリティシュ・ハードというアレンジになっています。

コンサートでは好んで演じられる曲というのも頷けます。

程よく動き回るグレッグのベース、右のヘッドフォンから入ってくるフランプトンのギターソロの音色も好きです。

 

6曲めの「Theme from Skint(スキントのテーマ)」マリオットの作。

ティール・ギターを効かせたフォーク・ロック、それもブリティッシュではなくアメリカン・フォーク・ロック、バーズ(The Byrds) 辺りに近い作風でコミカルな歌詞が歌われます。

この辺り、ティーヴ・マリオットの器用さが窺われます。

「スキントのテーマ」には「See You Later Liquidator」(清算人さん、さようなら)という副題がついていますが、ビル・ヘイリーの50年代のヒット曲「See You Later Alligator」をもじっているのでしょう。

Red Light Mama, Red Hot! (レッド・ライト・ママ、レッド・ホット)

前曲とは打って変わり、縦ノリのロックンロール。

2台のギターがガンガン押してきます。

後半にハーモニカを思わせるギター・ソロに、ドラムのシンバルが絡んでいって、フランプトンのギター・ソロに入っていく辺りが何ともかっこいい。

しっかりとしたリズム・セクションですがベースもかなり遊びにいっています。

自分の中ではハンブル・パイのイメージはこういう曲ですが、おそらくティーヴ・マリオットの色が濃く出ている曲ではないでしょうか。


Humble Pie - Red Light Mama, Red Hot!


最後はメローな「Sucking on the Sweet Vine(サッキング・オン・ザ・スィート・ヴァイン)」で締めくくっていますが、この曲のベースがまたいい。

グレッグ・リドリーは本当にセンスがいいベーシストだと思います。


さてフランプトンを送り出すための前哨戦として久しぶりに聴いたハンブル・パイ。

4人とも個性が際立っていていい曲が多いけど、このアルバムを聴く限りやはりステイーヴ・マリオット中心としたバンドという印象です。

やはりピーター・フランプトンのソロアルバムをを聞いて見ることにいたしましょう。