ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックを聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く(時々乱読)

BB&A 『ライヴ・イン・ジャパン』は日本限定のお宝品

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ベック・ボガート・アンド・アピス(Beck, Bogert and Appice、BB&A)は、ジェフ・ベック(g)、ティム・ボガート(b)とカーマイン・アピス(d)によるギター・トリオです。

ボガートとアピスは「キープ・ミー・ハンギング・オン」のヒットで知られるヴァニラ・ファッジの元メンバー。

第1期ジェフ・ベック・グループの解散後にリズム・セクションを探していたベックの眼鏡にかなってトリオを結成する予定になっていたが、ベックの交通事故による入院で棚上げになる。

その間二人はカクタスという新バンドを結成、ベックは復帰して別のメンバーと第2期ジェフ・ベック・グループを結成してアルバムを2枚出しています。

構想から経つこと3年余、ようやくタイミングが合って3人はBB&Aを結成したものの、スタジオ・アルバム1枚、そしてこの『ライブ・イン・ジャパン』を残してバンドは解散してしまいます。

この後ジェフ・ベック「ブロウ・バイ・ブロウ」ワイアード」とフュージョン色の濃い時期を経て、今に到るまで常に進化を続けており、BB&A、それもこの『ライブ・イン・ジャパン』はジェフ・ベックによる最後のロック・アルバムと言ってよいでしょう。

前置きが長くなりましたが、このアルバム、とにかく荒々しくも凄まじいパワーに溢れた逸品です。

BB&Aのスタジオ・アルバムも持っていますが、個人的にはこのライヴの方が断然面白い。

全曲良いのですが、特に好きな演奏を次にあげてみます。

「Superstition(迷信)」

いわずと知れたスティーヴィー・ワンダー『Talking Book』の中の1曲で、BB&Aのスタジオ・アルバムにも収録されています。

アピスが打ち鳴らすドラから収録が始まり、その時点ですでに観衆は熱狂の渦。
ベックはのっけからトーキング・モジュレータ(Talking Modulator)を口に含んで登場。

ゴワゴワ音から一気にメガトン級の「迷信」に突入。

うねるベース、ドラムのシンバル音の快感。

何という心地の良さ。

ベックのギターについてはもはや形容の必要もないでしょう。

(下記の映像は日本公演ではないと思います)


Beck Bogert & Appice - Superstition - 1973


食べ物に例えると最初からこってりしたステーキを出されている感じです。
変な表現ですが音が美味しい。

そういえばBB&Aはヴォーカル担当がいなくて、一時期ポール・ロジャースにも声をかけていたようですが、結局断られたとか。

2曲めの「Lose Myself with You(君に首ったけ)」などは、まさにポール・ロジャースに歌わせて見たかったと思います。

Boogie(ブギー)

BB&Aは3曲めでヤードバーズの『ロジャー・ジ・エンジニア』収録の「Jeff's Boogie」を演っていますが、5曲めで

「さあ、2回目のブギーをやるよ」
「みんな、ブギーでのってくれ」

の声とともに始まるこの曲も超ヘヴィーなのにノリノリの曲。

阿波踊りのステップが似合いそうな畳み掛けるリズム。

何かもう、ドラムがまさに阿波踊りの鉦と太鼓なのが笑える。

Living Alone(リヴィング・アローン)

スタジオ盤のBB&Aに収録してされている曲です。

学生の頃、他校のドラマー、ギタリストとトリオを組んでいたことがあって、不遜にも渋谷のエピキュラスのステージで演ったうちの1曲がこの「リヴィング・アローン」。

失敗したとかそういう次元ではなく、演奏中にギタリストがコードを踏んで滑って転倒。

アンプからコードが抜ける。そこでリズム隊だけでも続けていればそれなりにカッコよかったかも知れませんが、ドラマーが立ちつくし、私もただ呆然という悲劇でした。

BB&Aのライヴ盤のライナー・ノーツを読んだら大阪厚生年金の初日にボガートがステージから飛び降りたらベースのジャックが抜けて、うんぬんと書いてあるので、プロでもハプニングはあるということですね。

冒頭のギターとベースの掛け合いに続くギター・リフ。

中盤からのギター・ソロはこれぞライヴの醍醐味というべきインプロヴィゼーションの妙。

ため息しか出ません。

 


Beck, Bogert & Appice ► Livin' Alone Live in Japan 1973 [HQ Audio]


ステーキの前菜にステーキのメイン・ディッシュを出された挙句に、デザートは「NYチーズケーキでどうだ!」とばかりに、アンコールの濃厚なPlynthとショットガンのメドレー。

 

アンコール曲が終わるや否や「じゃ、さよなら」とあっさりと立ち去っていった様子で、聴衆が興奮冷めやらぬままため息をつきながら帰途についたであろうことが推測されます。


当時BB&Aのコンサートに行った人たちが羨ましい。

 
さて『ライブ・イン・ジャパン』は日本のみで発売された上にWikipediaによれば
ジェフ・ベックの意向により廃盤になっていた」ため1989年にCD化されるまで、レアなアルバムであり、海賊盤も出回っていたとのこと。

 

改めて聞いてみると、日本限定、それも廃盤になっていたというのが本当にもったいない。

ベックのギターはどの曲のどの部分と言えないほど全曲にわたって圧倒されるし、アピスとボガートも最高。そしてライヴ盤ならではの昂揚感。インプロヴィゼーション

ベックは常に前進していて、過去の栄光に浸ることのない稀有なミュージシャンですが、それはそれとしてこのアルバムは十分に世界に拡散できる作品だと思うのです。

 

(下は全曲です)


Beck Bogert & Appice - Beck Bogert & Appice Live (1973) - Full Album