ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックを聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く(時々乱読)

名盤中の名盤『ブラインド・フェイス(Blind Faith)』

f:id:londonvixen:20190107063903j:plain


皆さま、遅ればせながら明けましておめでとうございます。

さて2019年の50年前の1969年はウッドストックがあった年で、アルバムでもキング・クリムゾンの1枚目、ストーンズの『Let It Bleed』をはじめ名だたる名作が多く発表された年でした。

ブラインド・フェイスブラインド・フェイス(Blind Faith)』もこの年のリリース。

元クリームのエリック・クラプトン(g、v)とトラフィックスティーヴ・ウィンウッドkb、g、v)のジャムから始まったこのバンドには、同じく元クリームのジンジャー・ベイカ(d)が加わり、さらにベーシストのリック・グレッチ(b、violin)が入ったスーパーグループとして発足当時から注目を集めました。

彼らの1枚目にして唯一のアルバム『Blind Faith』は英国のアルバム・チャート1位、ビルボードのポップ・アルバム1位という記録を残しています。

ちなみに冒頭にアップしたアルバム・ジャケットは英国版(日本版もこれ)で、当時11歳の少女の裸体を使ったこのジャケは公序良俗に反するとされため、私が持っている米国版はメンバー4人が写った何の変哲も無い表紙です。

 

f:id:londonvixen:20190107064141j:plain

 

収録の6曲全てが無駄のない作品群ですが、いち押したいのは次の3曲。

「泣きたい気持ち(Had to Cry Today)」

1曲目はウィンウッドによるブルース・ナンバーで、ウィンウッドの歌唱力が発揮されています。

グレッチのベースとウィンウッドのギターがユニゾンで同じフレーズを繰り返す中、クラプトンの秀逸のギターソロが始まり、やがてウィンウッドとツインリードとなって絡み出す。

イカーの歯切れ良いドラミングも魅力です。

「プレゼンス・オブ・ザ・ロード(Presence of the Lord)」

4曲目はクラプトンの作。
何度も繰り返し聴いた曲です。

何と言っても圧巻のギターソロ

巧いギタリストは数多くいても、ここまで鳩尾(みぞおち)にぐいぐいと食い込んでくるギターソロは少ない。

ウィンウッドのピアノとオルガン、ドラムのシンバル使いも本当に好き。

やっと行くべき道を見つけた、やっと自分の居場所を見つけた、今ならどの扉を開くこともできる、主(Lord)の恩寵によって、という、迷える子羊が神の恵みによってあるべき生き方を見出した。

という信仰告白のような曲に聞こえるのですが、のちにクラプトンは自伝で「どうしても欲しかった新居が手に入ったことを歌っただけ。神とは関係ない」と身も蓋もないコメント。

種明かしなのか照れ隠しなのかは分かりませんが、ガクッとするようなネタでこんなに崇高さ漂う曲が書けるとは恐れ入ります。

 


Blind Faith Presence of the Lord

 

歓喜の海(Sea of Joy)」

5曲目のウィンウッドの曲。
このアルバム中、最も好きな曲で、何度聞いても飽きることがありません。

ウィンウッドはかなり声を張り上げて高音部が潰れていますが、曲調にあった情感を感じさせるヴォーカルです。

中途に入るリズム・セクションのギャロップがいいし、リック・グレッチヴァイオリンのソロ・パートにも癒されます。

「船に乗り歓喜の海に漕ぎ出すのを待つ」「自由に向けて航海に」という歌詞は何かを象徴していますが、作者が言明していないようで、ネットにはさまざな憶測が散見されます。

奴隷の解放のことだとか(多分違うと思う)、死んであの世に行くことだとか(これも違うと思う)、ヘロインによる意識の解放だとか(一番ありがちだが最もつまらない)。

結局、意図したところは分からないけど、ウィンウッドが歌うこの曲を聴くと何かの救いを切実に求める人の心を感じます。

 


Blind Faith ☮ Sea of Joy

 

今回の「押し」にはいれませんでしたが、2曲目のウィンウッド作の「Can't Find My Way Home(マイ・ウェイ・ホーム)」も非常に有名な曲です。

哀愁がただよう英国調のフォークが入った曲で、多くのミュージシャン・グループがカヴァーしています。

ウィキペディアに載っているだけで30数アーティストがカヴァーを出しており、その中には日本のジャズ・シンガー阿川泰子さんや「ジーザス・クライスト・スーパースター」のマグダラのマリア役のイヴォンヌ・エリマンジョー・コッカーなども入っています。