ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックを聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く(時々乱読)

ドゥービー・ブラザーズ『キャプテン・アンド・ミー』のなつかしいグルーヴ感

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これは懐かしいアルバムで昔LPでよく聴いていたのをCDで再入手しました。

ドゥービー・ブラザーズの3枚目のスタジオ録音でリリースは1973年。

トム・ジョンストン(g、ハーモニカ、ARPシンセサイザー)、パトリック・シモンズ(g、ARPシンセサイザー)、タイラン・ポーター(b)、ジョン・ハートマン(d、パーカッション)、マイケル・ハサック(d、パーカッション)が当時の正規メンバーで、ほとんどの曲をジョンストンあるいはシモンズが書いています。

 

それに加えてのちに正式メンバーとなる元スティーリー・ダンジェフ・バクスター(g、スティールギター)、キーボードのビル・ペインとパーカッションのテッド・テンプルトンが参加しています。

当時は知らなかったのですが、ドゥービーズはサンノゼ出身とのことで私にとってはご当地バンドと言えます。サンノゼシリコンバレーの中心として発展する少し前のことですね。

 

好きな曲をいくつか挙げて見ます。

ナチュラル・シング(Natural Thing)

ネットではなぜか評価が高くないのですが、好きな曲です。
ウェスト・コーストらしい軽くノリのいい曲で、複数台のギターの絡みやユニゾンが楽しい。

ドゥービー・ブラザーズはタイラン・ポーターのよく動くベースがかっこいいのですが、この曲でもベースの魅力が発揮されています。

バックにヴィブラスラップらしいパーカッションが鳴っているのも小気味いい。

ロング・トレイン・ランニン(Long Train Runnin’)

シングルカットされてヒットした有名な曲。

もしイントロ曲当てクイズが当時あったら多少とも洋楽を聴いていた人ならおそらく正解したであろう特徴的なギターのカッティングのイントロ。

そこに入ってくるグルーヴィなベース、もうカッコよすぎます。

ギター、ベース、ドラム、コンガが一体となって表現している列車の走行音。

家も家族も失ったミス・ルーシーはもう戻らないだろう、と具体的な人名、イリノイ・セントラル鉄道、サザン・セントラルといった路線名も出てきますが、全体に鉄道が悲喜こもごもの感情を乗せて走っていく様子が想像されます。

勝手な空想ですがこの設定は夜行列車ではないでしょうか。

哀愁のこもったコーラスもいいし、曲にぴったり合ったハーモニカのソロも絶妙です。

 


Doobie Brothers- Long train running

 

チャイナ・グローヴ(China Grove)

テキサスのサン・アントニオにある中華街を街の人が面白くおかしく噂しているという歌。

「ロング・トレイン」のB面としてシングルカットされた曲です。

町のシェリフやその同僚が「サムライの刀(Samurai Swords) 」を携帯しているらしいというありがちな混同や、ローンスター州(テキサスのこと)の一角だけど彼らはそんなの知ったことじゃない、いつも東を向いてオリエンタルな生活の連中だからね、というようなPolitically Incorrectな表現がありますが、45年も前の曲なのでここは大目に見ましょう。

複数のギターで繰り出されるリフ、即興で入れているらしいピアノ、ドラムのハイハットの音、もちろんベースも好きな曲です。

 

クリーン・アズ・ザ・ドリヴン・スノウ(Clean as the Driven Snow)

「Pure as the Driven Snow(吹きだまりの雪のように汚れがない)」というイディオムがあるので、踏まれたことがない雪のようにクリーンである、という意味でしょうか。クリーンにはドラッグをやっていない状態という意味のスラングもあるのでひょっとしたら関係あるかもしれません。

どこか英国フォークを思わせる曲です。

前半はギターのフィンガリングとハーモニーの美しさが透明な空気を創っています。
当初アコギと思っていたのはどうやらセミアコでしょう。
シンセサイザーが背後で木々の間を吹く風のような音を出しています。

前半では、「燃え尽きないように自分を律することを学んだ、いや学んだつもりだった」と言い、後半では「ある考えが自分に取り憑いて自分を動かしてしまう、もう少し時間が欲しい」という抽象的ながら焦りと苦悩の歌詞です。

後半ギャロップのようなリズムが入ってきてからの数台のギターの絡み、ハモリングの美しさが印象的です。

下のライヴ録画ではCD録音にはないフルートが入っています。

 


The Doobie Brothers - Clear As the Driven Snow (Live)

 

サウス・シティ・ミッドナイト・レディー(South City Midnight Lady)

ミッドナイト・レディーが行きずりの女性なのか特殊な商売の女なのか分かりませんが、恋人ではなさそうです。

落ち込んでいた自分は彼女に救われた、落ち込みんで憂鬱な気分の時はあなたを思い出そう、という孤独な魂の癒しを歌っています。

ピアノとアコギ、ハーモニーが綺麗で、ウェストコーストらしい曲。
途中で入ってくるジェフ・バクスターのスティール・ギターもいい感じです。

ザ・キャプテン・アンド・ミー(The Captain and Me)

最後はタイトル・トラック。

メロディがひたすら美しく、特にサビの「Growin’ Growin’」の辺りのハーモニーがいい。
何本ものギターが織りなす色彩が見事です。

ベースはタイラン・ポーターらしい動きのあるベースで、ちょっと目立ちすぎ?というぐらい目立っています。

後半のパーカッションの洪水状態もいい感じです。

ちなみに「Captainって誰?」と考えてしまいましたが、作者のジョンストンによれば「別に誰でもない」「詞の内容に特に意味はない」(Wikipedia) らしいです。

 

余談ですがこの記事を途中まで書いて近所のグロサリーに買い物に行ったら、いきなり店内の有線ラジオで「ロング・トレイン・ランニン」がかかってびっくり。

妙なところで「引きよせの法則」が作動してしまいました(笑)。