夏だ!祭りだ!『ウッドストック』第1回ー反戦フォークとマウンテン
今晩は、ロンドンVixenです。
今でこそ一般的になっているロック・フェスですが、その元祖と言えばウッドストック、モントレー・ポップ・フェスそしてイギリスのワイト島フェスあたりでしょう。
ウッドストックは1969年の8月15日から3日間、ニューヨーク州の農場に40万人の若者を集めた歴史的なイベントで、「愛と平和の祭典」として反戦、カウンター・カルチャー、ヒッピー文化という時代背景を体現したものでした。
1994年には25年目の節目として「Woodstock II」が開かれました。来年は50周年なのでまた大規模な音楽祭が開かれるのでしょう。
1999年に開かれた30周年のWoodstock IIIは暴力、放火、レイプなどが横行し、初回のハッピーな雰囲気とは程遠いものだったようです。
私は大昔、1969年ウッドストックの記録映画を観た記憶があります。
内容はほとんど忘れましたが、オープニングでCSN&Yの曲「Woodstock」をバックにステージの櫓(やぐら)を組み立てているシーン、ジミー・ヘンドリックスが演じたアメリカ国歌は強い印象に残っています。
ウッドストックといえば冒頭の写真がジャケになったアルバムが有名です。
私はこのジャケのレコードは持っていませんが、25周年記念のボックスを入手しました。(箱といっても4枚のCDと小冊子がついた簡素なものです)
今回から4回にわたってウッドストック特集としてCDを聞いていきたいと思います。
1枚目の参加アーティストは、
リッチー・ヘヴンズ
カントリー・ジョー・マクドナルド
ジョン・セバスチャン
ティム・ハーディン
メラニー
アーロ・ガスリー
ジョーン・バエズ
サンタナ
マウンテン
どういう編集の基準か、1枚目はフォークの大御所が集まっていますね。
2枚目からCCR、ジャニス・ジョプリン、ザ・フー、テン・イヤーズ・アフター、ジェファーソン・エアプレインとロックの色彩が濃くなります。
反戦フォークと希望の世界
リッチー・ヘヴンズからジョーン・バエズまで、所々ベースやドラムは入るものの基本的にギター一本の弾き語り。
ベトナム反戦から理想の世界、日常のささやかな喜びなど、若さゆえのナイーヴさはあるものの当時の若者の「自由」と「平和」に対する熱い思いが溢れています。
ボックスの小冊子でも白人と黒人が抱き合っている写真がフィーチャーされていますが、今のPolitically Correctといった建て前以前に、音楽と平和を愛する者には人種など関係ない、という楽観的な理想世界(ある意味セサミ・ストリート的な)が展開されています。
そうした新しい価値観に眉をひそめたであろう当時のアメリカの親世代の保守的な世界観。親が反対しようが、親世代へのアンチ・テーゼを胸に40万人の若者は一路ウッドストックを目指します。
それは当時の彼らにとって生まれ変わるような経験だったに違いありません。
フォークの中で印象に残るのは、労働組合の活動家であったため殺人罪の嫌疑をかけられ証拠が不十分なまま処刑されたスェーデン系移民「ジョー・ヒル」を歌ったジョーン・バエズの歌。
社会運動的なテーマは今の時代にはそぐわないかもしれないけど、バエズの伸びのある声が不条理な死と不屈の希望を美しく歌っています。
一方(と比べるのも何ですが)、がっかりなのはメラニー。
ミキシングのせいもありますが、声もいま一つ、音程も合っているのか外れているのかよく分からない。
マウンテン
ロックのファンにとって1枚目の目玉はマウンテン(Mountain) の
「ブラッド・オブ・ザ・サン(Blood of the Sun)」と
「想像されたウェスタンのテーマ (Theme For an Imaginary Western)」でしょう。
マウンテンは何度かメンバーチェンジをしていますが、ウッドストックに出たのはレスリー・ウェスト(g)、フェリックス・パッパラルディ(b)、スティーヴ・ナイト(kb)、ノーマン(N.D) スマート(d)のメンバーです。
「ブラッド・オブ・ザ・サン」。
特徴的なギターのリフで始まるブルース系のハードロック。かなり好きです。
ギターとベースがユニゾンになったり、ギターのソロが入っている時のベースが面白い動きをしていたり、レスリーとフェリックスのコンビネーションがすごくいい。
「想像されたウェスタンのテーマ」
オルガンで始まるメロディアスな曲。
後半のレスリーのギターが切なくて泣かせます。ああ、巧い。
ちなみにマウンテンにはウッドストックの会場である「ヤスガーの農場」を題に冠した「Yasgur's Farm」という曲があります。
これも良い曲ですが、残念ながらCDには収録されていません。
動く映像がなくて残念。
Mountain live at Woodstock, the real versions
フェリックスはいいベーシストでしたが聾唖(ろうあ)が理由でバンドを去り、42歳という若さで妻に拳銃で射殺されてしまいます。事故か事件かは不明なままであるといいます。
ちなみにレスリー・ウェストですが、巨体で有名だった彼は近年は痩せてちょい太めぐらいのいい感じの外見に変わっています。
次回は2枚目、キャンド・ヒート、ジャニス・ジョプリン、CCRの登場です。