ロキシー・ミュージックの「カントリー・ライフ」フェリー節が炸裂
今晩は、ロンドンVixenです。
今回はロキシー・ミュージックです。
初めてロキシーを聞いたのは3枚目の「ストランデッド」の「マザー・オブ・パール(Mother of Pearl)」でしたが、ブライアン・フェリーの巧みなヴォーカルに圧倒されました。
ジェスロ・タルのイアン・アンダーソンもそうですが、独特のイントネーションでモノローグを延々やっていて全然飽きさせないという、まるで西洋版浪曲師のような技巧。
ウィキペディアにある逸話では、キング・クリムゾンでヴォーカルを探していた時に応募してきたのが何とブライアン・フェリーとボズ・バレルだったとか。結果的にはボズが採用されフェリーは落選したものの、彼のセンスを買ったロバート・フリップ達が所属事務所のEGレコードに紹介した、とあります。
ロキシーの1枚目はクリムゾンの詩人ピート・シンフィールドがプロデュース、のちにはジョン・ウェットンがロキシーに参加、イーノとロバート・フリップがコラボ、とロキシーとクリムゾン、なかなか縁がありますね。
『カントリー・ライフ』(1974) は『ストランデッド』に続く4枚目。
アメリカでは袋に入れて売られ、カナダでは背後にの木だけになってしまったというジャケット写真の品のなさはご容赦ください。
ブライアン・フェリー以外のメンバーは、フィル・マンザネラ(g)、アンディ・マッケイ(オーボエ・サックス)、ポール・トンプソン(d)、ジョン・ガスタフソン(b)。前作からイーノの後任を務めているシンセサイザー、キーボードのエディ・ジョブソン。
ザ・スリル・オブ・イット・オール(The Thrill of It All)
一曲目はめちゃくちゃパワフルな曲ですが、曲調がどこかストーンズっぽい。
というか、これをスローテンポで引きずるように演ったらもろ「Dancing with Mr. D」。
ガリガリ引っかかるようなギター、かなり好きです。
これに応えていくストリングスの使い方もいい。ジョブソンはヴァイオリン奏者でもあるので、シンセサイザーで出しているストリングスにヴァイオリンを重ねているのでしょう。
もちろんフェリーもここぞとコブシを効かせています。
Roxy Music - The Thrill Of It All
スリー・アンド・ナイン(Three and Nine)
かなり好きな曲です。
ピポピポ〜とキーボードのイントロがキャラバンみたいで、シンクレアが歌い出しても違和感ありません。軽妙ででオシャレな曲で途中のサックスのソロも光っています。
このアルバムの曲の歌詞は恋愛がらみの抽象的なものが多いのですが、この曲はその中でも数字遊びのようで訳がわかりません。
オール・アイ・ウォント・イズ・ユー(All I want is You)
バーズの「マイ・バック・ページズ」を思わせるイントロで来るかと思ったら、一転して耳に馴染みやすいノリノリのポップス。
フェリー節、全開です。中盤から後半のマンザネラのギター・ソロがすごくいい。
フェリーのボーカルに呼応するように入っていてめちゃくちゃカッコいいです。
TOPPOP: Roxy Music - All I Want Is You
アウト・オブ・ザ・ブルー(Out of the Blue)
ロキシーらしい曲調のこの曲は、ギター、ピアノ、ベースが冴えています。
ギターも歌いまくっているし、ピアノとユニゾンで攻めているベースラインの小気味のいいこと!
イフ・イット・テイクス・オール・ナイト(If It Takes All Night)
アンニュイな気分の彼女を慰めたいのは山々だけど、彼も自分自身のことで手一杯。
彼女が求めている言葉”I love you”を言える心境じゃない。音楽を愛人にしたらマダム・クロードぐらいには癒してくれるし。さあ、もっと酒だ。酒を飲んでうさを忘れるぞ!
となぜか唐突にパリ娼館のマダム・クロードが登場します。
これは自分が落ち込んでいる時には会いたくないタイプの男ですね。
こういうブルースをロキシーが演るとやたらと明るく楽しい。
後ノリのシャッフルが気持ちよく、ホンキー・トンク・ピアノがいい感じです。
ファズがかかったサックスがハーモニカのように聞こえておもしろい。
ビター・スィート(Bitter Sweet)
自分的にはこのアルバムでもっとも好きな曲です。
この上なく美しいベースの高音とピアノのイントロ。
曲全体を通してベースとピアノが実に見事に使われています。
失恋の歌らしく感傷的な甘いメロディーにしっくりはまるフェリーの歌い方。
途中にそれを打ち破るように荒々しい、象の行進のようなマーチが2回入り、二度目はドイツ語の歌詞で歌われる。前後にくる甘いメロディとの対比が絶妙。
終盤近くサックスの音色も本当に綺麗です。
下記の映像は吸血鬼の映画にフェリーの画像が貼られています。
聖なる三枚の絵 (Triptych)
ヨーロッパの宗教画などでよく見る三面鏡のように3枚セットになっている絵画、あれがトリプティックですね。
キリストの磔刑と復活を歌った歌詞、あるいはそれを使った比喩なのかは分かりませんがロキシーにしては異色の作品です。
チェンバロが奏でるメロディにのせたヴォーカルとコーラスは、中世の賛美歌のようでもあり、どこかの国歌のようでもあります。
カサノヴァ(Casanova )
引きずるような重たいファンク・ロック。
色んな方向から次から次へと入って来るファズの効いたギターの音色の百花繚乱。
それに絡んでいくベースのカッコいいこと。
フェリー節も余すところなく発揮されています。
カーサーノヴァ!と耳についてクセになりそう。
クラブというか昔のスピークイージーみたいな場所でこんな曲を聴けたら最高です。
リアリー・グッド・タイム(Really Good Time)
ピアノをバックに誰かに語りかける形で淡々と歌っていますが、平坦な曲が退屈でないのは歌唱力の賜物でしょう。
イントロのサックスの哀愁。
途中のストリングスの合間に小さく入っているキーボードの美しさ。
ベースの動きもセンスの良さを感じさせます。
プレイリー・ローズ(Prairie Rose)
アメリカのカントリーを意識しているような曲。元気になれる曲です。
サックス、ギターのソロともにいいですが、ベースの動きを追ってほしい曲です。
まとめとおまけ
『ストランデッド』とこの『カントリーライフ』、いずれもブライアン・フェリーの個性が際立っています。
イーノがいた頃は、半分イーノ持ってかれていたような感がありましたが、ここに来てブランフェリーのバンドという位置付けが確固たるものになっています。
あららめて聞くとかなりクセの強いヴォーカルで、好き嫌いが分かれるかもしれませんね。
おまけの画像は若き日のブライアン・フェリーと、当時世界的な大旋風を巻き起こした小枝のようなモデル、ツイッギーが高校生に扮したデュエットです。
トラボルタとオリビア・ニュートンジョンの英国版という趣きがあります。
TWIGGY and BRYAN FERRY perform WHAT A WONDERFUL WORLD (1974)