ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックを聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く(時々乱読)

シド・バレット プロジェクト・パート2『Barrett』

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今晩は。ヴァーチャル・パブのロンドンきつね亭です。

細々続けております当ブログですが、訪問してくださった方が3月から多少増えました。もちろん他のブログ運営者さん達に比べると微々たる数なのですが。

とはいえ‥‥読者になってくださっている方は一向に増えません(読者登録してくださっている方々、誠にありがとうございます)。

訪問してくださる方の95%はグーグルとヤフーの検索からですが、未だにその3分の1強がピンク・フロイドの1枚目を扱ったシド・バレットは天才なのか」という記事からのアクセスです。

シドへの関心の高さにも驚きますが、登録者の方の少なさを合わせて考えますと、
シド・バレットっていうから見に来てやったけど、夜明けのパイパー一枚だけで薄っぺらい記事書きおって、誰がもう来るかバーカ」
ということではないか、と。いえ言葉が汚くて大変申し訳なくございません。

そうお思いの方がおられても至極ごもっともです。

 

というわけでシド・バレット・プロジェクトと称して(間に他のアーティストのアルバムを混じえながら)音源と資料を通じてシド・バレットという不思議な人物を少し掘り下げて行こうと思います。

まずは2枚目にして最後のスタジオ・アルバム『その名はバレット(Barrette)』(1970)を聴いて見たいと思います。

プロデュースはデイヴ・ギルモアとリチャード・ライト。前作の『帽子は笑う』同様にギルモアがベーシストとして参加、さらにライト(kb)とハンブル・パイのジェリー・シャーリー(d)が入っています。

なおジャケットの蜂と蟻の標本図はシド本人の作品です。

今日のお供はアブサンで。

ベイビー・レモネードとラヴ・ソング(Baby Lemonade, Love Song)−1&2曲目

最初の2曲は『夜明けのパイパー』の「Gnome」や「Flaming」を思わせるコード展開。60年代のシド・バレットの世界という印象で牧歌的な明るさにアンニュイさが加わった歌を淡々と歌っています。
シドのギターソロも聞かれるものの、両曲ともに何故かギルモアのベース・ラインの方が目立っている。


ドミノ(Dominoes)−4曲目

えらく物憂げなメロディですが、このアルバムの中で「ジゴロおばさん」と並んで好きな曲。波間にたゆたう舟に身を任せているような心地よさがあります。
この曲ではデイヴ・ギルモアがドラムも担当。器用な人です。
どこかで聴いた懐かしいメロディだと思ったら、タートルズの「Happy Together」とWikipediaにある。そう、それでした。

リック・ライトのオルガンは「手抜き」と評判が良くないものの、その分シドのギター・ソロが際立っています。この曲のギター・ソロはシド・バレットが符を逆に弾いていることで知られていますが、ユーチューブにアップされていた楽譜の進行通りに加工したバージョンは違和感あり。やはり逆向きがよく所々音がひしゃげてバグ・パイプのようになっているのが面白い。

メイジー(Maisie)ー6曲目

暗いブルースを歌うとよりもブツブツ呟いている。
前曲の「ラット」とともに60年代の前衛と言うべきかアングラというべきか、この雰囲気決して嫌いではないです。

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(画像はCDより引用)

ジゴロおばさん(Gigolo Aunt)ー7曲目

この曲は初めて聴いたのは確か中学生の頃で、ラジオで一度しか聴いてないのにシド・バレットというとこの曲を思い出すぐらい印象が強かったものです。
当時はなぜか映画トッツィーに出てくるようなおばさんをイメージしたものの、「Gigolo Aunt」は実際にはおばさんというより女版ジゴロで、男性ジゴロのようにお金目的ではなくて男をハントすることが趣味の美人のイメージらしい。

 

Wikipediaを見たら、ジェフ・ベックの「ハイ・ホー・シルバー・ライニング」をベースにしているとあって、え?そうだっけ?と思って続けて聴いてみるとリズムと曲展開が共通している

シドのギターもいいが、デイヴ・ギルモアのベース・ライン、シャーリーのドラム、ライトのオルガンもいい。
ノリのいい曲でシングル・カットされてもよかったと思います。


Syd Barrett - Gigolo Aunt


ウルフ・パック(Wolf Pack)

Wikipediaによれば、シド・バレットはインタビューでこの曲をお気に入りの曲のひとつに挙げていたとのこと。
確かに秀逸なギターソロが入っています。が、ヴォーカルはサイケというか支離滅裂というか、ハモリがハモってないのでかなりきつい、というのが第一印象です。

 

感想

まずシド・バレットの音楽はプログレでも、サイケですらなくシド・バレット独自の音楽世界であるということを再認識します。 その世界が『夜明けのパイパー』で完結せずにもう少しダークな方向にはみ出しているという印象。

 

ただしこのアルバムについては全体的にかなりプロデューサーのギルモア色が強いのではないか。ギルモアもライトも精神的にも肉体的にも限界を超えているシドを何とかスタジオに連れてきて音楽を作らせたいという意図も、友人を助けたいという友情もあったに違いありません。一方で売れるものを作らねばというプロデューサーとしての責任もあったはずで、必ずしもシド・バレットが正気なら目指したであろう方向とは同じではなかったのではないでしょうか。

 

このアルバムと同じ年に『原子心母』を発表してプログレの王道を突き進んでいくピンク・フロイド。独自の音楽世界の中にありながら何故か普遍的にピンク・フロイドに影響を与え続けたシド・バレット

 

凡人の私にはその何故かが分かることがあるのでしょうか。

To be continued…..