ロンドンVixen 60年代ー70年代のロックをひたすら聴く

60年代後半から70年代の黄金期を中心にロック名盤・名曲を聴く

B級?好き嫌いが分かれるR・ストーンズの「ブラック・アンド・ブルー」

f:id:londonvixen:20180320163239j:plain

 

今晩は。ヴァーチャル・パブのロンドンきつね亭です。
さて今回はローリング・ストーンズ『Black and Blue』をやって見たいと思います。

 

ミック・テイラーが辞めてしまった当時、ストーンズは後任のギタリストを探していました。

候補に上がっていたのはジェフ・ベックを筆頭にロリー・ギャラガー、ハンブル・パイにいたスティーブ・マリオットとピーター・フランプトン等々。

ってそんな個性が強いギタリスト入れてどうするんだという感じもしますが。
このアルバムはギタリストのオーディションの意味合いもあったと聞きます。

最終的にはフェイセズを辞めたロン(ロニー)・ウッドが正式にメンバーになり、このアルバムで初登場していますが、8曲中ロンのギター参加は3曲のみ。

他の候補者の一人であったキャンド・ヒートのハーヴェイ・マンデルとセッション・ミュージシャンのウェイン・パーキンスが他曲のセカンド・ギターを務めています。

このアルバムは正直万人受けはしないかもしれません。  
現に1976年のローリンング・ストーン誌の記事をみると、「以前と同じバンドと思えない」、「彼らの特色だった凄まじいエネルギーの代わりにテキトーさが目立つ」、「いくつかの演奏やヴォーカルの巧さはあるものの、魂が入っておらず曲の構成も手抜き」と、もうボロクソです。

一方で、ストーンズのアルバムのトップ5に入ると言っている人もいます。

私に関しては初めて買ったストーンズのアルバムがこの『ブラック・アンド・ブルー』で、2000年を超えるまでこの一枚とベスト・アルバムの合計二枚しか持っていませんでした。

視聴者としては後発もいいところですが、その後他のアルバムを聴いてから改めてこのアルバムを聴いてみて、「かなり好き」というのが率直な感想です。

では聴いてみましょう。

お勧めはレゲエ調の曲に合わせてラムとシェリーを使ったジャマイカ・マティーニというカクテルです。

ファンキーな曲

このアルバムはファンク、ロック、レゲエ調の曲、バラード、ジャズ系の曲が混在している印象です。

第1曲目のホット・スタッフ(Hot Stuff)はファンキーな曲です。

ディスコ文化全盛期の音です。

ギターのカッティングがカッコいい。

リズムセクションがひたすら同じリズムを刻む中、ピアノ、ギター、ヴォーカルがアドリブで入ってきます。ビリー・プレストンのピアノもいいし、ハーヴェイ・マンデルのギターソロも時々妙なノートが入っているものの悪くない。

ただし全体としてバラけた感があります。ベース、ドラム、リズム・ギター、パーカッションのリズムがなんとかツナギになっているという印象です。

ストーンズらしいロック

2曲目の「ハンド・オブ・フェイト(Hand of Fate)」はいかにもストーンズらしい曲。後ノリのリズム、引きずるヴォーカル、キーズ・リチャーズらしいギター。「ブラウン・シュガー」にも通じるところがあって、誰が聞いてもストーンズ以外ありえない曲です。

最終曲のクレイジー・ママ(Crazy Mama)」も従来のストーンズらしい曲です。
この曲ではキースがベース、ロン・ウッドミック・ジャガーがギターという変則的な入り方をしています。

それにしても、スタジオ録音でこれほど揃わないコーラスも珍しい。ライブならかろうじて許されるレベルで各自が蛮声を張り上げています。

この曲と比べると「ギミー・シェルター」辺りがいかに端正な曲であったかと気付かされます。ギターも同様です。ある程度意図的にやっているような気もするし、面白いっちゃ面白いんですけど。


レゲエ調の曲

3曲目の「チェリー・オー・ベイビー(Cherry Oh Baby)」はアルバム中唯一のカバー曲で元歌はジャマイカのレゲエ・ソングライター。

ロン・ウッドのギター、ニッキー・ホプキンスのオルガンが入っています。
この曲のチャーリー・ワッツのシンバル、ハイハットの入れ方がいい。

コーラス部分は、ジャマイカ辺りの集会所で地元の人たちが歌っているようなローカル感が漂っています。

大昔の学生時代の夏にカリブ海の某島で2週間ほど仕事をした際、地元の小学校の構内から聞こえてきたレゲエの節回しを、燃えるように真っ赤な花が咲く火炎樹とともに思い出しました。


「ヘイ・ニグリータ(Hey Negrita)」はレゲエ、ファンク、ブルースが混ざった曲。
ニグリータは黒い娘さん、の意味で差別用語だと批判が出たところ、ミック・ジャガーから「ニカラグア人妻(当時)のビアンカをニグリータと呼んでるけど何か?」という発言が出てさらに物議を醸しました。
重いけど歯切れのいいリズムの心地よさ。さすがワッツとワイマン、だてにストーンズのリズム・セクションやってません。ビリー・プレストンのピアノもいい感じです。

 

f:id:londonvixen:20180320165148j:plain

バラード

4曲目の「メモリー・モーテル(Memory Motel)」。このアルバム中一推しの曲です。

ノスタルジックで美しい。

この曲ではミック・ジャガーがピアノ、キーズ・リチャーズはエレピ、ハーヴェイ・マンデルがリード・ギターという編成です。

海に面したメモリー・モーテルで一夜を過ごしたハシバミ色の目をした女性。

しっかりした自立心を持った女性のようで翌朝はピックアップ・トラックを運転してボストンに行ってしまう。自分はバンドのツアーでバトン・ルージュに行かなければいけない。一夜限りの相手だけど強い印象に残った女性。

ハーヴェイ・マンデルのギターソロがいいです。

ミックの歌唱力が際立つ曲ですが、後半にCo-Vocalとしてキース・リチャーズのソロ・パートが入っているのも一興。

 

f:id:londonvixen:20180320165251j:plain


7曲目の「愚か者の涙」はこのアルバムで唯一ヒットチャートに登場した曲。

ブルース系のバラードですが、ミック・ジャガーの歌の上手さに感嘆します。

歌詞は、「私」が家に帰ると、幼い娘がやってきて「パパ、どうして泣いているの?泣くなんておかしいよ」という。愛する家族がいるはずなのに虚しさを感じている男の涙と、無邪気な娘の対話が描かれています。ちょうど娘のジェイド・ジャガーが幼少だった頃の曲でしょうか。

ミック・ジャガーってこんなに心の機微を歌えるシンガーだったのか、と。

ニッキー・ホプキンスがピアノとシンセサイザーで参加。

シンセサイザーによるストリングスの音も優しく美しい。


ジャズ系の曲

「メロディ(Melody)」ビリー・プレストンのピアノから始まる気だるいジャズがかったブルース。

のったりのったりと重いリズムを刻むドラムとベースの上に、インプロヴィゼーションであろうピアノ、ギターのフレーズが乗っていきます。

「メロディ、それが彼女のセカンド(ミドル?)ネーム」というフレーズが延々と繰り返され、この倦怠ムードが何ともいい。

場末のクラブで半分酔っぱらって聞きたい感じです。

歌詞で「俺は彼女を探していた。まるでマスタードがハムを必要とするように」という辺りが妙に村上春樹っぽかったり。時折ジャングルのサルの叫びのようなミック・ジャガーの奇声が入っていたり。
「メモリー・モテル」に次いで好きな曲です。


終わりに

ブライアン・ジョーンズ、ミック・テイラーというギタリストの時代を見てきた人たちは、ファンクをやってみたりレゲエに感化されているストーンズに「こんなのストーンズじゃない」と思ったかもしれません。

また少々粗雑な印象の曲もないとはいえません。

その一方で「メモリー・モテル」や「愚か者の涙」のような名曲もあり、レゲエ調、ジャズ系の曲も面白い。(ビリー・プレストンの貢献も大きい)

賛否はあるけれど、過渡期にあるストーンズの記録として、個人的にはかなり楽しめるアルバムだと思います。